吹けよ風!打てよアレン!!

カープと趣味の日記

「奥州安達原」(歌舞伎観劇記)

 

 201711月某日

歌舞伎座 吉例顔見世興行「奥州安達原-環宮明御殿の場-

 

すっかり秋が深まりつつある11月に久方ぶりに歌舞伎座に行って来ました。

 

この日は天気も良かったので、有楽町駅から晴海通りを歩いて歌舞伎座へ。

と、ふと気づきます。

「なんかやたら警官とすれ違わないか?」と。

それもその筈、この日は某国大統領の来日期間中。

特に悪い事をしている訳でもなくましてや「友達の友達がテロリスト」なんて訳でもないのですが、何となく落ち着かない気分で歌舞伎座へたどり着きます。

 

到着した時は1幕目の「鯉つかみ」の幕見販売開始の少し前。

1幕目幕見の列が捌けてから2幕目の幕見販売時間まで待ちます。

長椅子に座ってぼんやりと晴海通りの喧騒を眺めていると、ふと知らない老婆が話かけてきました。

はて?

平日昼間から歌舞伎座幕見の列に並んでる30男がそんなに珍しいのでしょうか?

しかし、話に応じようとすると、係員が割って入って来たので老婆は向こうへ行ってしまいました。

鳩が豆鉄砲をくらったかのようにキョトンとしている私。

そこに係員が説明するには、たまにあんな風に幕見の席の人に話しかけてチケット譲渡を申し出てくる人がいるそうです。

当然ながら、これはいわゆるダフ屋行為ですから係員が制止するのも当然の事。

まあ、恐らくあの老婆は一緒に行く人が来れなくなって困って申し出て来たのかもしれませんけれども。

長い事、歌舞伎座で幕見していますが、こんな経験は初めてでしたね…。

 

ところで本日、観劇したのは「奥州安達原」。

 

今年の観劇は新歌舞伎の「一本刀土俵入」のみでしたので、かなり久しぶりの丸本物となります。

舞台は文字通り前九年の役の頃の奥州。

前九年の役というと丸本物の舞台としては恐らくかなり古い時代に入るかと思います。

もっとも、「妹背山婦女庭訓」のように蘇我入鹿などが登場する時代を舞台にしながら普通に江戸時代の風俗が登場するのが歌舞伎の「世界」ですからあんまり気にする必要もないでしょうが。

物語のあらすじは省略…というか非常に説明するのが難しい内容です。

というのも、この演目自体が本来のあらすじをかなりカットしたものですので前後の幕を見ないと、話の筋を理解しにくいのです…。

この舞台でのメインの登場人物は演目の別名(「萩袖祭文」)にある通り子連れの瞽女である萩袖(中村雀右衛門)です。

見せ場は舞台上で実際に役者が三味線を演奏するという趣向は珍しいかと思います。

もっとも、この萩袖自体は父である平傔仗直方(中村歌六)と母親である浜夕(中村東蔵)にこれまでの不孝を詫びて泣き、追い返されて途方にくれて泣き、義弟である安倍宗任(中村又五郎)父親殺害を教唆されて泣き…とわりと泣いている場面が多い印象。

それでいて、話がなかなか進まないので現代の映画やアニメに慣れた人にはちょっともどかしいかもしれません。

実際、私の周囲に座っていたのは外国から来られたと観光客と思しき人たちだったのですが、明らかに頭に「?」が浮かんでいるかのようでした。

もっとも、初見で意味はよく分からなくとも義太夫節の哀切溢れるメロディーと、人形浄瑠璃を移殖した名残と言えるその振り付けの妙は現代劇とは異なるプロットの構造を補って余りある丸本物の魅力かと思います。

 

この前の段に起こった(と思われる)環宮失踪の責任を取り直方が、親と夫の板挟みあって萩袖がそれぞれ切腹した直後に、袖萩の夫である安部貞任(中村吉右衛門)が登場。

「思われる」というのが、この演目の前段の説明が一切ないのである程度予想するしかないのです。

というよりこの演目に環宮なる人物自体がそもそも登場しませんし…。

 

その安部貞任が正体を八幡太郎義家(中村錦之助)に見破られて、「ぶっ返り」を見せるのですが、「ぶっ返り」と言えば同じく中村吉右衛門家のお家芸である「一条大蔵譚」が思い浮かびます。

阿呆を装って賢明な貴人に立ち返るのが「一条大蔵譚」なら貴人を装って荒々しい俘囚の長に立ち返るのがこの演目。

同じ家の芸でもその対比は大変興味深いものです。

 

ただ、私が一番印象に残ったのは結果的には自身の計略の犠牲となった妻である萩袖と、娘であるお君(子役の人なので名前忘れました…)を前に家族への憐憫の情を見せる安部貞任の描写。

既に姿は「ぶっ返り」の後の八幡太郎義家に戦いを挑まんとする荒々しい姿。

父である安倍頼時の仇を討つために家族をも犠牲にする非常な武人が見せる情は胸を打ちます。

安部貞任にそうさせたのは辺境の武人としてのある種の単純さなのか、本来は押し隠している情の深さなのか…。

人によっては解釈が分かれるかもしれません。

まあ、芸談とか詳しく読んでないから本来どういうものかは私が知らないというのもありますが…。

ただ、その「腹」を匂わせるぐらいに留めて決して前面に押し出す訳には行かないのも歌舞伎の奥深さでもあり、現代劇とは異なる難しさなのでしょう。

そう考えると、松竹のHPの説明にある通り安部貞任の「豪快な演技」は確かに魅力ではありますが、全体的に殺伐としたストーリーの中で時折、顔を見せる登場人物の情の機微が私にはより魅力的に感じました。

 

また、上記で何度か書いた以外にも話の筋が分かりにくく唐突な部分が結構あるので、前後の話にも興味が湧いてはきます。

まあ、この辺りがみどり狂言の魅力であり限界なのでしょうか。

そもそもこの話だけだと安部宗任はけっこう酷いキャラクターですし…。

CSファイナル第4戦●「力の差」(カープ2017)

広島東洋カープ3-4横浜DeNAベイスターズ

クライマックスシリーズファイナル(カープ23)

広島市民球場(MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島)

 

勝利投手 ウィーランド1

セーブ投手 山崎康2セーブ

敗戦投手 藪田11

 

本塁打

(C)1号②

(BY)筒香1号①

 

先発、薮田は初回から不安定な投球で5回に連打を浴びKO

打線は初回に3得点を先制も以降は1安打の拙攻。

再び打てず守れずの展開で惨敗しシリーズ3連敗。

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「力の差」

まさか、144試合を戦った後にこんな事を連想するなんて思いもよりませんでした。

しかしながらそれは事実ですから仕方がありません。

 

藪田和樹は前回登板時に60球程度とはいえやはり中4日は荷が重すぎたとしか言いようがありません。

要所で頑張ってはくれましたが、初回から四球を連発してピンチを招いた末に中盤にスタミナ切れとなりました。

一方、相手は休養十分のジョー・ウィーランドを先発に持ってくる余裕がありました。

こういう点、4番手以降の大瀬良大地や中村祐太ではなく薮田に頼らざる得ない部分で相手チームとの先発陣の力の差を感じざるを得ません。

また、そのウィーランドに対して薮田と曾澤翼はあまりにもナーバスになり過ぎた点も結果的に逆転を招いただけに見逃せません。

確かに、ウィーランドは投手としては打席においてはかなり異常な数字を見せてはいます。

しかしながら、総合的に見れば周囲の野手の方がやはり手強い訳ですから第1打席の安打はともかく、走者なしから連続四球なんてあり得ないでしょう。

どうも、このシリーズにおいては前回の石原慶幸といいこの曾澤といい、完全にチームの穴と化しているようにしか思えません。

ここにおいても、投手の得意なボールをズバズバ投げ込ませてくる相手捕手陣との力の差を感じます。

 

それに加えて、初回に見事な先制攻撃を見せながら以降は、職務放棄のような醜態を見せた打線。

なかなか要所で攻めきれないのは相手も同じ事。

しかし、それでも粘り強く好機を作り続けるという点では明らかに相手が上を行っていました。

また、それに加えて決定的な場面での集中力という点においても、前回のブラッド・エルドレッドや、今日の無死満塁というこれ以上にない好機で無様極まりない岩本貴裕や、小窪哲也とは比較のしようがないぐらい差を感じます。

 

要するにベイスターズとはレギュラーシーズンとは別の短期決戦で勝ち抜く為に必要な要素という点では重要な要素をベンチ・選手両面で力の差があったという事でしょう。

それは日程や勢いというだけを言い訳にする事は出来ない差というものと言わざるを得ません。

 

とはいえ、明日も試合はあります。

明日負ければ今シーズンは終了です。

アドバンテージを許したという事実以上に、上記のように両チームの短期決戦における力の差は歴然としている訳ですから大変厳しい状況です。

しかし、それが短期決戦である以上は挽回もまた早急に出来る側面もある筈。

私はそれに賭けたいと思います。

再び、「頂点のそのまた頂点」を目指す為に。

 

CSファイナル第3戦 ●「恐慌状態に突入」(カープ2017)

 

広島東洋カープ0-1横浜DeNAベイスターズ

クライマックスシリーズファイナル(カープ22)

広島市民球場(MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島)

 

勝利投手 井納1

セーブ投手 山崎康1セーブ

敗戦投手 ジョンソン1

 

先発、ジョンソンは序盤に失点も要所を凌いで51失点でリリーフ陣も完封リレー。

打線は、3併殺打などの拙攻を繰り返して無失点。

好機を活かせないまま完封リレーを喫し2連敗。

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昨日の野村祐輔と異なりクリス・ジョンソンは良く耐えてはくれましたし、その後のリリーフ陣も期待に応えてくれたとは思います。

しかし、それはシーズン中でもあまり見られない程の拙攻で全て台無しになってしまいました。

6安打を重ねて塁上を賑わすことは出来ても、その後は勝手に恐慌状態になってしまいまったく繋がらないようではお話になりません。

特に、3打席2併殺打5つも相手にアウトを献上するという考えられない離れ業を披露した石原慶幸と、満塁というチャンスで自分勝手な打棒に終始して試合を興ざめさせたブラッド・エルドレッドには深い失望しか覚えません。

また、6回の石原の愚行の後に、ジョンソンに代えて天谷宗一郎を代打という意味不明な起用。

結果はご存知の通りエンドラン失敗で実質的にはゲッツーで相手投手を助けただけで、相手にただただ利するだけでした。

選手個々は愚かベンチすらパニックに陥ってしまったのがありありと伺えます。

こんな打線が相手なら相手投手は多少くさいところに投げ込めば勝手に自滅してくれる訳ですから、1点差のプレッシャーなんて塵ほども感じなかったでしょう。

 

貧打を重ねて攻撃力が発揮できず、それに何の対策も選手もベンチも出来ずダラダライニングを重ねて敗れる。

この状況は賢明なカープファンなら誰もが思い浮かべる事でしょう。

同じく「王手まであと1勝」と迫った昨年の3戦目以降の日本シリーズ

あの時とこの2試合のカープは大変酷似しています。

 

確かに「6戦で3敗までなら大丈夫」とは言いました。

ですから悲観的になるにはまだ早すぎます。

しかし、これだけ頼みの打線が酷い状況に陥ってしまった以上は22敗だからまだまだ大丈夫と、呑気に構える事は出来ないでしょう。

 

ましてや明日以降の先発は大瀬良大地と中村祐太。

残念ですが二人とも到底、今日のようにプレッシャーの中にあって無失点で試合を作り続けるなんて事が出来るレベルの投手ではないのですから。

CSファイナル第2戦 ●「強靭さに欠ける」(カープ2017)

広島東洋カープ2-6横浜DeNAベイスターズ
クライマックスシリーズファイナル(カープ2勝1敗)
広島市民球場(MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島)

勝利投手 濱口1勝
敗戦投手 野村(祐)1敗

本塁打
(BY)宮崎1号①

先発、野村祐輔は序盤から走者を許す苦しい投球のすえ5回4失点でKO。
打線は初回から再三の好機を活かせず西川の2打点に留まる。
投打共に相手に圧倒される惨敗でプレーオフ2戦目を落とす。
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29年前の10月19日といえばオールドファンなら誰もが思い出すあの「10.19決戦」で近鉄バファローズが最後の奇跡を信じて激闘を繰り広げた日です。
まさか、それが相手に乗り移った訳ではないでしょう。
しかし、結果は相手に攻守で圧倒されるまさに「惨敗」でした。

先発の野村祐輔はコースを狙うのが信条。
しかし、今日はそれが行き過ぎて勝負どころで相手がボール球に手を出す事を願い続けるような意図が見え見えな印象。
それはそれで悪くはないのですが結局は、そこに球威や思い切りの良さがない結果、粘られた末に甘くなったところを痛打されるか四球を出すかに終始してしまったように思えます。
挙句に、それだけ臆病にすら見えるぐらいに慎重な投球だったにも関わらず逆球を投げてノックアウトとは笑い話にもなりません。
昨日の薮田和樹や、今日の相手先発である濱口雄大のような力強さとは正反対の慎重さを通り越した気弱さしか感じられずただただ残念でした。

一方で、打線も各々が7安打と決して打てない訳ではなく、ブレーキになっていた松山竜平でさえ出塁だけはしてはいました。
しかし、これまた勝負強さに欠けて絶好の好機を再三に渡って逃し続ける間に先発が試合を壊すという最悪の展開。
特に得点圏での振る舞いで遮二無二得点に結びつける狡猾さを見せたのが西川竜馬ぐらいでは話になりません。
正直、攻守両方の面で甲子園での雨の中の死闘を繰り広げた相手チームとはここぞの強靭さと言う点では明らかに開きがあるようにすら感じます。

とはいえ、まだプレーオフも第2戦。
アドバンテージがある以上、事実上はこちらが先行している状況に変わりはなくあと2敗までは出来る訳ですからまだまだ慌てる段階ではない事は言うまでもありません。
しかし、今日のように好機を活かせず先発は粘れず、エラーで失点するという「短期決戦でやってはいけない事を総ざらいした」ような試合をこの段階で見せたという事実を見ると先が思いやられる気がします。

まだまだ真の目覚めとまでは行かないようですね…。

CSファイナル第1戦 ○「再起動」(カープ2017)

広島東洋カープ3x-0横浜DeNAベイスターズ

5回降雨コールド

クライマックスシリーズファイナル第1

広島市民球場(MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島)

 

勝利投手 藪田1

敗戦投手 石田1

 

ポストシーズン初先発の薮田は落ち着いた投球で5回無失点。

打線は4回までノーヒットも5回に集中打で3点を先制。

試合は試合成立直後に降雨の為、コールド勝ち。

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2年連続リーグ王者として受けて立つ試合にして実に17日ぶりの実戦となったプレーオフ初戦でしたが、恐らく史上例を見ない雨天コールド勝利という結末になりました。

もう1時間ぐらい様子を見てから行うのではとも思えたのでこの幕切れは意外ではありました。

しかも試合成立直後しかもホームチームが先制した直後での決定ですから、雨の中で強行された甲子園でのファーストステージ第2戦と比較して異論はあるとは思います。

とはいえ、日程の都合や試合展開などあの時とは事情が異なりますから一概に間違った判断だったとは思えません。

というより、あのようなまるで田んぼの中のような異常極まりない状況での試合と比較されても困るというものです。

 

それにしても、「短期決戦は先制点が重たい」とはよく言ったものですが、変な形でそれが具現化した形。

そう考えると、4回まで無安打と「再起動」に時間を要した打線を我慢強く待ち続けた薮田和樹の好投は大きな価値がありました。

正直、少しでも綻びを見せればコールド負けしたのは我々の方だった訳ですから…。

今季、15勝に最優秀勝率のタイトルを勝ち取ったとはいえ、初めてのポストシーズンでの先発ですから少々荷が重たい気はしましたが、期待以上の出来。

球数も少ない為に短い間隔での登板に備えられそうですから、次回の登板にも期待したいものです。

まあ、もう彼が今週は投げないのが理想ではありますが…。

一方、薮田に救われた形となったのはフリーズした状態が長かった打線。

今季、カープ戦無敗の石田健太(奇しくも藪田とは地元対決だ)相手に苦しめられました。

しかし、きっかけがさほど選球眼が良いとは思えないサビエル・バティスタの四球と言うのも皮肉な話ではありますが、相手の綻びをついて上手く繋がって一安心です。

また、雨で濡れた芝で打球のスピードが落ちる事を読んだ好走塁も見事。

 

とはいえ、やはり5回でようやく安打というのはやはり短期決戦を考えると遅きに失した感はあります。

初回のようにいきなり四球を与えるなど相手投手達も立ち上がりはさほどでもなかったのですから、こういうところからいきなり得点して試合を有利に進めたいもの。

なにより、相手も結果的にはリリーフ陣を休ませる事が出来た訳ですから余計にそれが大事になるとは思います。

難しいとは思いますが、次回以降はそれを見せて欲しいものです。

そもそも今日の先発の薮田のような投球がそう何度も出てくるほど甘いものでもないので…。

再び受けて立つ(2017年CSファイナル展望)

37年ぶりにリーグ連覇という快挙を成し遂げてからちょうど1ヶ月。

 

いよいよカープも「クライマックスシリーズファイナル」ことプレーオフに登場する事となりました。

当然ではありますが、優勝チームとして受けて立つ立場なので1勝のアドバンテージもあります。

それを踏まえると、プレーオフの突破条件は6試合中に3勝…極端な言い方をすれば五分で切り抜ければ突破ですから、今日含めて7試合で5勝しないといけない相手に比べれば有利なのはいうまでもありません。

「勝って当然負けたら恥」と楽観視したいところですが…そうは問屋が卸さないのが短期決戦の怖いところです。

実際、現状のカープはこの試練に対してどのようなスカッドで望むのかを少し考えて見たいと思います。

 

まずは先発。

今季は、チーム防御率は「3.39(リーグ3)」ではありますが、リリーフ防御率が「2.77(リーグ2)」に対して先発だけに限れば「3.71(リーグ3)」。

いずれも良い成績なのですが、数字の上ではやや先発が足を引っ張った印象はあります。

通常の試合以上に先制点の価値が重たくなりがちな短期決戦で大切なのはまずは相手より先に失点しない事。

主戦級の投手をぶつけられる以上は、凄まじい威力を発揮した打線といえでも得点は困難である短期決戦においてどこまで耐えられるのか少々不安は残ります。

実際、プレーオフで先発が予想されるメンバーを眺めても、今季最高勝率に輝き、大車輪の活躍を見せた薮田和樹はともかく、6回付近で力尽きる試合が多く2ケタ勝利を逃した野村祐輔や、今季故障を連発して昨年の半分も活躍していないクリス・ジョンソンが主戦級です。

また、それに続くのも後半大失速してフラフラになりながら何とか二ケタ勝利に辿り着いた大瀬良大地と、完全に力尽きた岡田明丈の代役である中村祐太…。

少々、心許ない印象を受けてしまうのは気のせいでしょうか?

もっとも、QS率自体は対戦相手を上回っている訳ですから、多少の失点に目をつむる必要はあるかもしれません。

 

4番が故障で抜けても最後まで凄まじいばかりの威力を発揮した打線も、不安要素はあります。

優勝決定戦で負傷した安部友裕プレーオフに間に合わず、実質3塁は西川竜馬一択になってしまった事です。

今季、自身初の規定打席到達とリーグ4位の打率は勿論、高い得点圏打率を誇る安部が抜けるのはやはり大きな痛手と言わざるを得ません。

勿論、西川も西川で素晴らしい打撃センスを持ってはいますが…不安視される守備も含めてどこまでやっていけるかは未知な部分は多い気がします。

また昨年もでしたが今季のイニング毎の得点の分布を眺めるとカープは試合序盤に比して中盤以降の得点がやや多い傾向があります。
これまた、「逆転のカープと言われる程の土壇場での勝負強さの発露とも言えるでしょうが、上記の通り先発がやや心もとなく先制点がレギュラーシーズン以上に大事という点で考えれば、嫌な数字には見えてしまいます。
実際、プレーオフを戦うベイスターズは上位チームであるので当然ですが、リリーフがしっかりしているチーム。
ビハンドで終盤を迎えた場合に逆転するのは至難の業です。
そうならないように先発が抑えているうちにまとまった援護を期待したいものです。

 

最後にリリーフ。

最終的にクローザーに返り咲いた中崎翔太を中心に、ジェイ・ジャクソン、一岡竜司中田廉に加え優勝目前で不振に陥った今村猛もレギュラーシーズン最後の横浜戦で復帰と駒は揃っています。
しかし、同じ役割でシーズン初めから終盤まで駆け抜けた投手がいない事などを考えると時期によって調子の浮き沈みが激しい部分があるようにも感じられます。
また、中崎、ジャクソンに関しましては昨年の日本シリーズでの「逆シリーズ男」とも呼べる不振が頭をよぎってはしまいます。
とは言うもののこの辺りまで心配すると、もはやジンクスなどの世界の話。
むしろ、今日含めて7連戦を強いられる相手チームに比べてこの長い休養期間でリフレッシュ出来ている現状は有利と言えるでしょう

逆にここがダメなら他が良くても全てご破算になってしまいますが…。

そうならない為にも、ベンチがシチュエーションに的確な投手をチョイスしていく必要があるのは言うまでもありません。

 

色々駆け足で考えてみましたが、攻守を軽く眺めてみた限りでは不安点はいくつかあるものの、いずれも大きいとまでは言えずにいつも通りに試合が出来れば勝てるとは言えます。
しかし、いつも通りの試合が出来なくなった途端に大崩れしてしまう怖さがあるのが短期決戦。
それはリーグ優勝の勢いのままに駆け抜けた昨年のプレーオフ2戦までの日本シリーズに対して、攻守で綻びが見えた途端に一気に崩れて惨敗した3戦目以降の日本シリーズの対比を思い起こせばわかるというものです。
そうなると、「上手くいかなくなった時の対処法」をしっかりとベンチが考えているかという事にも注目が出来そうです。
昨年の日本シリーズはあまりにも「いつも通り」固執しすぎて敗れた側面もあったかと思います。
幸い、上記の通りプレーオフ自体は「6試合中3敗」まではしても大丈夫な訳ですから、浮き足立たずに大崩れする前に修正する勇気が必要となるでしょう
今季は昨年に比べると色々と選手のポジションや役割を入れ替えて戦えたようには見えますから、それが上手く作用すればと願わずにはいられません。

 

まあ、なにはともあれカープが再びあの晴れ舞台に上がれる事を祈って。

「挑戦者」で「勝者」(ファーム日本選手権制覇に寄せて)

広島東洋カープ5-2読売ジャイアンツ
2017年ファーム日本選手権
宮崎サンマリンスタジアム

勝利投手 高橋昴
セーブ投手 藤井
敗戦投手 高木勇

本塁打
(C)坂倉③
(G)岡本①

先発、高橋昴は中盤に失点を重ねるも6回2失点で試合を作る。
打線は、今村の前に沈黙も7回に連打で追いつき坂倉の3ランで逆転に成功。
終盤での逆転劇で球団史上初のファーム日本一の称号を掴む。
MVPには坂倉が選出される。
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ファーム日本選手権」。
大変申し訳ないですが、1987年から始まったこのコンペテションは私にとっては存在自体は知っていたもののこれまでいつどこでやるのかよく分からない代物ではありました。
しかし、今季はカープが26年ぶりの挑戦。
やはり注目せざるを得ません。

舞台は相手チームのキャンプ地として名高い準本拠地…というよりその名誉監督様が名付け親の宮崎サンマリンスタジアム
また、相手チームのメンバーを見ると一軍で見た名前がいるだけでなく、今日が引退試合のかつてのタイトルホルダーや、果てはFA移籍してきた選手すらいたのですから非常に難しい試合が予想されました。

一方で、カープは高橋昴也と坂倉将吾という高卒ルーキーバッテリーに試合を託すという冒険に出ました。
いくらファームの主眼が育成の場とはいえ曲がりなりにもタイトルがかかった試合。
さすがにいくら何でも酷ではないかと思えましたが…。
しかし、若い二人はいずれも力を発揮して、私の考えがあまりに浅はかだった事を証明してくれました。
特に素晴らしいのが、先日横浜でプロ初打点を目撃させて貰った坂倉の勝ち越し3ラン。
相手投手の森福充彦は今季不振とはいえ、かつては球界屈指の左殺しともいえる存在だった投手。
そんな投手から高卒1年目にしてあれだけ決定的な当たりを放てるというのは、驚異的と言うしかないでしょう。
勿論、これをもってこれから始まるプレーオフや、日本シリーズでの戦力になるとまでは言えません。
それでも、試合を作った高橋昴也や、最終回で落ち着いた投球を見せた藤井晧哉ともども今後に期待したいものです。

育成があくまで主眼だが、勝利にも拘る。
それこそ、かつてジョー・ルーツが万年下位のお荷物球団の選手たちに語った言葉、「勝利だけが全てではない。しかし勝つことは大事だ。」に通ずる近年のカープ二軍が目指した方向性でした。
今日の若き高卒バッテリーを始めとして、その二律背反する要素を巧みに組み合わせて勝利をした事実はウエスタンリーグ優勝と共に、それが結実した形とも改めて思えます。

近年はいくらか改善されつつあるとはいえ、駅からバスが一日数本しか通らず、ナイター設備もなく、スタンドには時折蛇すら現れるという「秘境」とも呼べる球場での努力から、挑戦者として試行錯誤した末に掴んだ勝者という称号。
二軍とはいえ、これは終生誇りにするべきものでしょう。

本当におめでとう!広島東洋カープ!!