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カープと趣味の日記

2017年のカープを振り返る(投手編)

2017年広島東洋カープ成績

 

143試合88勝51敗4分

勝率.633(1位)

 

 

ちょっと遅い話題ですが、去る11月20日にNPBアワードの発表があり、リーグ連覇を成し遂げたカープからはリーグ最優秀選手として丸佳浩が選出されたとのニュースがありました。

これで、球団史上初の平成生まれの最優秀選手が誕生したばかりか、外野手からの選出も1980年の山本浩二以来の快挙となりました。

また、ゴールデングラブ賞に3人(菊池、丸、鈴木)が受賞したのに続いて、ベストナインに至っては実に5人もの選手(會澤、菊池、田中、丸、鈴木)が選出され、なんとベイスターズと共に野手部門を独占。

11月23日のファン感謝デーや、同じく25日に2年連続で挙行されたの優勝記念パレードで、ファンもその喜びを多く分かち合った事でしょう。

 

思えば、あろうことか3位のチームに実に14.5ゲーム差をひっくり返される形で日本シリーズ進出を阻まれ、最後はプロ野球史上最悪の汚点を残す形で終了した2017年のカープ

しかし、一方でレギュラーシーズンでは球団史上2度目のリーグ連覇を37年ぶりに成し遂げたばかりか、勝率も昨年を僅かに上回って球団記録を更新とするという輝かしい記録を残したシーズンでもありました。

昨年、やはり結果的には圧倒的な成績で優勝を飾ったものの黒田博樹が現役引退し、主戦クラスの先発投手が2年連続でチームを去るという形で迎えたのが今シーズン。

下馬評では優勝候補に挙がっていたものの、連覇を予想できるほどであったとも思えません。

そう考えると、レギュラーシーズンだけを切り取れば素晴らしい結果を残したと言えるでしょう。

では、何故今季、このチームはこのように連覇という果実をもぎ取る事が出来たか?

ちょっとデータをつまみ食いしながら、軽く考えてみたいと思います。

 

2017年広島東洋カープ投手陣の主な成績

 

防御率3.39(リーグ3位)

WHIP1.28(リーグ3位)

奪三振数1035(リーグ4位)

与四球476(リーグ3位)

 

先発防御率3.71(リーグ4位)

QS率58.4%(リーグ2位)

 

リリーフ防御率2.77(リーグ2位)

HP数140(リーグ3位)

 

昨年は前田健太が抜けた穴を見事にカバーし25年ぶりの優勝を演出した投手陣。

一方で、上でも書きました黒田博樹が現役引退。

これは「カープの連覇は難しい」という意見の根拠として挙げられてはいましたが、一理あるとかと思います。

主に、球団史に残るレジェンドが抜けるという心理的な部分もありますが、むしろそれ以上に大きいのは、安定してQS(クオリティスタート)を担保してくれる投手が抜けたという純粋な戦力という観点からです。

また、黒田以上に大きな痛手だったのは昨シーズン、外国人左腕初の沢村賞に輝き、開幕投手でもあったクリス・ジョンソンの相次ぐ疾病と故障による離脱。

ジョンソンの最初の離脱がシーズン開幕直後でしたから、チームの前途に暗澹たる思いがしたのは私だけではなかったでしょう。

しかも、これらの懸念はある程度は当たってしまいました。

 

実際、今季の投手陣の残した数字を振り返ると、チーム全体での防御率(3.20→3.39)、WHIP(1.26→1.28)はともに悪化。

なかでも特に大きく悪化しているのが、先発の防御率(3.29→3.71)で、ちょっと連覇を達成したチームとは思えないぐらいの悪化ぶりです。

昨シーズンは、最多奪三振を除く先発投手の主要タイトルを野村祐輔クリス・ジョンソンが分けあったうえにジョンソンが外国人左腕として史上初の沢村賞に輝きました。

しかし、今季は途中から先発ローテに入りながら救世主ともいえる八面六臂の活躍を見せてくれた薮田和樹こそリーグ最優秀勝率(.833)のタイトルを獲得しましたが、その薮田を除けばタイトル獲得投手はなし。

それどころか、規定投球回を満たしたうえで勝利数、防御率奪三振ともに5傑に入る投手すら皆無でした。

加えて、与四球(418→476)に至っては、昨年はおろかここ3年で最悪の数字。

黒田の引退とジョンソンの離脱という痛手に加えて加藤拓也や、床田寛樹といった新戦力が軒並み期待外れだった事が、モロに出ていた結果と言えるでしょう。

普通に考えたら破綻しかねないような状況ではありましたが、上手く被害を最小限に食い止める事ができたました。

それは何故か?

 

まず、注目したのがQS率。

上記防御率などのようにやはりこの数字も悪化(62.24%→58.4%)はしているものの、さほど大きな悪化ではありません。

また、複数回勝利を挙げた先発経験投手でQS率が40%以上の投手数(8人→7人)も昨年に比べれば大差はありません。

つまり、先発登板して2回に1回程度は6イニング3失点以内で収められる投手が常時5人以上はいたという事です。

そういう観点で考えると、大きく飛躍した薮田に加えて最終的には不振で終ったとはいえ、昨年の成績を上回った岡田明丈や、内容的には微妙でも何とか試合は作り続けて結果的に復活を果たした大瀬良大地に加えて、年間通しての活躍ではなかったものの昨年の戸田隆矢のようにパートタイムで輝いた九里亜蓮と、中村祐太の存在がやはり大きかったと言えます。

このように2回に1回程度はだいたい試合を作れた事に加えて、昨年から更に大きく飛躍して天文学的な数字を残した援護率(4.56→5.24)も合わさって、勝利数が昨年同様に延びたと推測されます。

つまり、試合を完全に支配出来ないレベルでありながら、ある程度は我慢ができる投手の頭数を揃えられた事が、打線の威力を邪魔せず、防御率などの数字の割には二桁勝利及び、それに準ずる投手が5人も現れるという事象に繋がったのでしょう。

 

ですが、それら以上に注目するべき最大の要素も見逃せません。

 

それは、リリーフ陣の成績。

 今季のリリーフ陣は、昨年活躍した中崎翔太、ジェイ・ジャクソン、今村猛が昨年より数字を落としはしました。

しかし、やはり似たような状況の先発陣がそれに引きずられて上記のように軒並み数字を悪化させているのに反して、リリーフ陣の防御率(3.06→2.77)と大幅に改善。

また、ホールドポイント数(128→140)も増加しています。

これは、先発からの負担が昨年よりも増えた事を示してはいますが、2桁以上のホールドを記録した投手数(3人→5人)が昨年より増加している訳ですから、それ以上に同点、もしくは接戦で投げられる投手の数が増えたと証と言えそうです。

今季は、上記3人の不振に加えて、昨年二桁ホールドを挙げたブレイディン・ヘーゲンズが不振でライアン・ブレイシアの獲得も完全な失敗に終わったというマイナス要素もありましたが、それを中田廉一岡竜司の復活がかなりの大きさで補ったと思えます。

一部のスポーツマスコミには今季のカープ投手陣では中崎、ジャクソン、今村の3人が昨季に比べて数字を落とした為、「リリーフ陣が弱点だった」という意見も見られました。

しかし、上記の通りそれは木を見て森を見ない浅はかな意見と言わざるを得ません(そもそも、チームのセーブ数自体は昨年とさほど変わりませんし…)

むしろ、昨年大活躍した3人が数字を落としても、上手くやりくり可能な投手の人数が増えた事で、リリーフ全体の防御率は改善し、大きく落ち込んだ先発陣を助けたと言えるのです。

 

以上のように、同じく昨年活躍した投手の引退や故障などがありながらも、それを埋める戦力が存在したという点では、先発とリリーフのセクションでは共通の出来事ですが、数字的に見れば、昨年からの既存の戦力が調子を落とした影響がより大きかったのは先発陣であったかと思います。

そうである以上、先発陣に関してはこのまま放置すれば、来季以降は大きな弱点となってチームの足を引っ張る要素になるとも言えます。

実際、勝利数のわりにイマイチな数字の内訳を見れば、今季に関しては、先発陣は一部を除けば「優勝に貢献した」というより「何とか足を引っ張らなかった」という程度だったようにも思えてしまう訳ですから。

 

参考にさせて頂いたデータサイト様

・BaseBall LAB様

http://www.baseball-lab.jp/

・データで楽しむプロ野球

http://baseballdata.jp/

プロ野球データFreak

http://baseball-data.com/

プロ野球ヌルデータ置き場様(2017年11月8日 閉鎖)