2017年広島東洋カープ成績
143試合88勝51敗4分
勝率.633
前回は、「投手編」としまして「明らかに数字が軒並み落ち込んだものの最低限の部分では耐えた先発陣を、大幅に数字が良化したリリーフ人が助けた」という話を書きました。
しかし、そのリリーフ陣も単独の数字では圧倒的とまでは言えませんでした。
というより、これだけでは優勝はおろかAクラスすら難しかったとすら思えます。
そうなると、その破壊力で相手チームのみならず、投手陣に降り掛かった問題を吹き飛ばしてしまった野手陣の存在こそ優勝の大きな原動力という事になってきます…。
実際に援護率は昨年を大きく上回る(4.56→5.24)という驚異的な数字というのも前回書きました。
では、今回はその打線に関する数字で更に考えてみたいと思います。
2017年広島東洋カープ野手陣の主な成績
打率.273(リーグ1位)
打点705(リーグ1位)
本塁打152本(リーグ1位)
盗塁112(リーグ1位)
盗塁死40(リーグ1位)
犠打116(1位)
OPS.769(リーグ1位)
NOI.486(リーグ1位)
得点圏打率.297(リーグ1位)
三振数1114(リーグ1位)
失策68(リーグ3位タイ)
改めて見ても、リーグ1位がほとんど皆無だった投手陣とは対象的にいずれをおいても軒並みリーグ1位という素晴らしい数字が残されました。
昨シーズンも野手の成績が軒並みリーグ1位を独占しはしましたが、今季はそれを更に継続したような形。
まず、打撃の主要3部門だけを見ると本塁打(153→152)と打率(.272→273)こそは大きな変化はないものの、打点(649→705)は大幅にアップしています。
しかし、OPS(.765→.769)とNOI(.484→.486)は微増に留まっている為、走者をいかに出して長打をいかに多く打ったかという点においては昨年に比べて大きく飛躍したという風には見えません。
しかし、それでも打点がアップしているという理由を挙げるならば、普段はセイバーメトリクスであまり顧みられない数値である得点圏打率(.264→.294)でしょうか。
「運が絡む」という部分で個人の成績を見る観点では確かに参考にしにくい部分がある数字ではある得点圏打率ですが、チーム全体で実に3割近い数値という凄まじい数字はさすがに無視できません。
また、盗塁数(118→112)は田中広輔が盗塁王に輝いたにも関わらず、微減している一方で、犠打数(91→116)は大幅に増加。
加えて、盗塁死(58→40)はリーグ1位ながらも昨年に比べて減っているので出塁率の高さのわりに盗塁企図数は減っているという事になります。
にも関わらず得点が増えているという事は、チーム全体で「如何に得点圏で走者を返すか」といういわゆる「ケース打撃」が打線全体で出来ていたという事でしょう。
これは得点を増やす事で大事だったのは「伝統の機動力野球」というお題目に囚われる事などではなく、むしろ得点圏で如何に走者を返す振る舞いが出来たかという事の証左とすら思えます。
また、個人の成績に目を向けますと、驚異的なチーム全体の数字の割に主なタイトル獲得者は最多安打の丸佳浩と、前述の盗塁王の田中広輔のみと意外に多くありません。
しかし、主要部門を見ると、ランクインする投手が皆無に近かった投手陣に比べて野手陣は打撃主要3部門10傑の中にいずれもリーグで一番多くの選手がランクイン(いずれも3人)しています。
また、90打点以上を記録した選手が減った(3人→2人)になった一方で、40打点以上は増加(6人→8人)。
実際に個々の数値を見れば、丸佳浩(90→92)や、鈴木誠也(95→90)が微増微減の一方で、田中広輔(39→60)、松山竜平(41→77)、ブラッド・エルドレッド(53→78)、安部友裕(33→49)と全体的に打線の中枢に入るような選手たちが好機で得点に繋げられるケースが増えた印象を受けます。
今季は、昨年4番でMVPに輝いた新井貴浩が低調で、代わって4番に座った鈴木誠也も8月末に負傷離脱となりながらも、最終的には松山竜平や安部友裕がカバーする形で最後まで打線の威力は衰えなかった事に象徴されるように打撃に関しては「特定の個への依存」が極めて少なかったとも言えそうです。
また、守備に目を向けますとゴールデングラブ賞にリーグ最多タイとなる3人(菊池、丸、鈴木)が選出された一方で、失策数(68→67)で前年から微減ながらリーグ3位タイ。
田中広輔のリーグ1位となる失策数(16)が響いた形になりますが、驚異的なRFを誇った彼の守備範囲を考えるとさほど問題になる数字とは言い難いでしょう。
むしろ、この田中広輔、菊池、丸とセンターラインを固める選手がいずれも大崩れも故障もせずにチームに君臨し続けた事が相次ぐ4番の離脱でもチームが混乱しなかった一番の要因にすら思えます。
一方で、同じセンターラインでも捕手の盗塁阻止率の低さにはやや不満が残ります。
會澤翼(.263)、石原慶幸(.240)といずれもリーグの規定では下位の成績で今季は、カープが盗塁数を減らしたにも関わらずリーグ1位に輝いている事からわかるようにリーグ全体での盗塁への意識が大変低かった事に救われている印象。
そうである以上は、ここは大きな改善が必要な部門とも言えそうです。
以上攻守に渡って、いくつかのデータで今季のカープを眺めてきました。
全体で見れば、故障者や離脱者の存在がもろに出て、課題や懸念点が多い投手陣(特に先発)と、故障者がいたにも関わらず、総花式に評価されるような凄まじい成績を残した野手陣と対象的な感想が出てきます。
バランスが大きく偏っている…とまでは言えませんが、先発投手陣の成績の落ち込みぶりを見るとやはり打線の恩恵は昨年以上に大きかったと言わざるを得ません。
これは、長いスパンで修正を繰り返しながら進めるレギュラーシーズンならともかく短期決戦では不利になりかねない要素。
そうである以上、この辺りの問題が大きく出てしまったのが、今季のあの忌まわしいプレーオフでの惨劇だった…とすら思えてきます。
今季は2年連続の優勝という球団史に残る果実を得る事に成功し、来季は球団史上では前人未到のリーグ3連覇に挑む事になるカープ。
しかし、前回と今回の数字を紐解くと、たんなる現状維持だけで留めていては、それは大変難しいように思えます。
特に先発投手陣に関しては大幅な改善が急務と言えるでしょう。
また、総花式と言いながらも打線も打線であれだけの数字な訳ですから、テコ入れなしで来季も維持できるかは疑問です。
それに対するチーム全体の戦力アップという観点での答えが来年春までにどれくらい出るのか?
不安ではありますが、楽しみでもあります。
参考にさせて頂いたデータサイト様
・BaseBall LAB様
・データで楽しむプロ野球様
・プロ野球ヌルデータ置き場様(2017年11月8日 閉鎖)