大変残念な結果に終わってしまった日本シリーズから早くも半月ほど。
シーズンが終了してファンの注目が集まるのはドラフト含むチームの補強と、一部選手の進退についてかと思います。
中でも今週、特に話題になったであろうニュースはブラッド・エルドレッドと、ジェイ・ジャクソンの退団の件でしょう。
言うまでもありませんが、ジャクソンは25年ぶりの優勝を成し遂げた2016年以来、エルドレッドはチームが優勝はおろか、Aクラス入りからすら見放されていた2012年途中以来からと、長年チームの貢献し続けてくれた功労者です。
勿論、今季の成績と、彼らの年齢や年俸を鑑みれば契約を結ばないという球団の判断は賢明ですし理解できる事です。
しかしながら、功労者が退団するというのはやはりファンとして悲しみを覚えるのはまた別です。
特にこの二人に関しては数字の上でのチームへの貢献は勿論、自身の功績に奢ることのない優れたパーソナリティでもファンに大きな印象を与えていただけに尚更でしょう。
上記の通り、どちらも長い在籍年数でしたがエルドレッドに至っては球団記録となるぐらいの長さ。
今だから書きますが、入団当初はあまりに荒削りに見えるそのプレースタイルに「日本での活躍は無理」だと思ってほとんど期待していませんでした。
しかし、それが大きな間違いだと気づくまであまり時間はかかりませんでした。
過去、このチームで活躍した打者であるアンディ・シーツ、グレッグ・ラロッカなどの例を見れば分かる通りこのチームは資金力の問題から、基本的に活躍してもしなくて外国人選手が在籍できる期間はせいぜい2年から3年が相場。
ましてや、打撃主要タイトル2冠を達成したぐらいの選手がこれだけ長く在籍するというのはほとんど奇跡に近い事です。
むしろ、彼の活躍と献身がこの球団のそういう状況に風穴を空けた要因の一つとすら言えるでしょう。
好不調の波の激しさや、故障の多さから年間通して活躍出来ない事や、時折見せる道具の扱いの粗末さという欠点はありましたが、長所と美点がそれを全て大きく上回りました。
球場にはチャイルドシート付きの自転車で通勤したり、家族を地元の小学校に通わせたり、オフには県南部で釣りに興じるなどまさに広島を愛し広島に愛された「ビッグカントリー」。
チームが絶望的に弱かった時代から主軸として活躍し続けたその貢献度は新井貴浩や黒田博樹と同様、むしろそれすら上回るものだと確信しています。
ジャクソンの加入はそれまで場当たり的だったブルペンにしっかりとした秩序をもたらしました。
彼の活躍なくして四半世紀ぶりの快挙はなかったのは言うまでもありません。
あの飛び跳ねるように飛び出してマウンドに上がるルーチンと、無事仕事を終えたら、自身への声援を噛みしめるように静かにマウンドを降りると共に見せてくれたあの「ジャクソンスマイル」がもう見られないと思うと寂しい以外の感情が出てきません。
特に印象深いのが2016年9月10日の東京ドーム。
この日の私は優勝が決まるかもしれないというプレッシャーから食事はおろか飲み物すら喉を通らず青白い顔をして内野2階席で試合を見ていたのですが、ジャクソンもプレッシャーからか、いつにもまして不安定な投球。
不安からか、私はほとんど気絶しそうになっていましたが、結果的には無得点に抑えていつもの「ジャクソンスマイル」。
他にも素晴らしい投球を見せて貰えた試合は無数にあるのにも関わらず、投げている最中は多くの不安と憶測を呼びながらも最終的にはファンを笑顔にさせる投手という彼の「らしさ」を一番濃厚に見せてくれたという場面という点で印象に残っています。
全然関係ないですが、この時に近くに座っていたジャクソンのお面を被ったお兄さんが周囲に何故か配っていたハイチュウとうまい棒は今でも記念に保管しています。
このジャクソンも安定感のなさとポストシーズンでの勝負弱さという欠点はありましたが、いずれもそれ以上にもたらしてくれた物の価値を毀損するものではありません。
エルドレッドと、ジャクソン…。
共通するのは、いずれも完全無欠な救世主というより欠点も抱えながら長所がそれを大きく上回るタイプの選手だったという事。
そして、この二人のどちらもなくしてカープの四半世紀ぶりのリーグ優勝もリーグ3連覇もあり得なかった事。
改めて感謝すると共にこの二人の前途が素晴らしいものである事を願っています。
そして、何よりこの二人の貢献にファンが感謝する為の機会を球団が作ってくれる事も願わずにはいられません。