最終的には日本シリーズでの惨敗と、その後の「Brexit」ならぬ「Maruexit」とも呼べる衝撃的な主力の流出という話題で終わりつつあるカープの2018年シーズン。
しかし、全体を通して見れば素晴らしい一年であったことは言うまでもありません。
何しろ、セ・リーグの歴史の中で読売以外は許されなかったリーグ3連覇という輝かしい事実が残ったのですから。
これまた言うまでもありませんがこれは、山本浩二や、今年急逝した衣笠祥雄といったこれまでの歴代レジェンドですらなし得なかった偉業であり、カープというチームを応援してきた私達にとっても大きな誇りです。
その偉大さに比べればその後のポストシーズンの事など些末な事柄に過ぎないと言っても良いくらいでしょう。
思えば、2015年のシーズン終了後の暮れ辺り。
私含めたカープファンの大部分は前田健太の移籍もあり、暗澹たる気持ちになっていたでしょうし、多くの物見高い評論家連中もカープのぶっちぎりでの最下位を予想していました。
しかし、結果はどうでしょう?
そこから旧市民球場跡地の優勝記念碑は長い空白を経て追記されたばかりか、碑文を彫るスペースすら無くなり隣に新たな碑を増築するに至りました。
また、球場のキャパを超えるファンが押し寄せてかつて平日は閑古鳥が鳴いていた3塁側内野席含めて球場は連日の満員で、今やカープは我が国のプロスポーツでもっともチケットが入手困難な球団です。
そんな夢のような日々を送れた事には今でも信じられない気分ですし、改めて感謝の気持ちしかありません。
しかし、それと同時にこうも思います。
「何故、今季もカープは勝ち続ける事に成功し、3年連続で栄冠を勝ち取り旨酒を酌み交わせたのか?」と。
実際のところ大まかに数字を見た時点で、それが必然と考えるのが難しいという事実に突き当たってしまいます。
というのも、37年ぶりの2連覇を達成した昨シーズンは、25年ぶりの歓喜を得た2016年と比べてほとんどの数字が下回っていたのですが、今季はそれに輪をかけて数字上は振るわない部分が多かったように見えるからです。
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広島東洋カープ2018年シーズン
※()は2017年の数字
※○数字はリーグ内順位
143試合82勝59敗2分(143試合88勝55敗4分)
勝率.582①(.663①)
総得点721①(736①)
総失点651③(540③)
打率.262③(.273①)
本塁打数175本②(152本①)
盗塁数95①(112①)
防御率4.12③(3.39③)
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基本的な数字を見比べて見ても前年度との単純な比較だけをしてみれば軒並み悪化しています。
特に目を覆うばかりなのが防御率。
実はチームの輝かしい結果に反比例するかのように2015年以降は悪化の傾向があるのですが、今季は失点数がリーグワースト1位で、防御利率に至ってはなんと一気に4点台にまで転落。
ここまで落ち込んだのは遡ると野村謙二郎時代2年目の球団創設期以降では史上最低最悪とも呼べた2010年(4.80)以来です。
思い出して見ると今季、先発陣は大瀬良大地が大躍進し、充実のシーズンを送った一方でその大瀬良以外の二桁勝利投手はクリス・ジョンソンのみで5番手以降の投手に至っては結局、最後まで「行方不明」で終わってしまいました。
また、リリーフ陣に関しても辛うじて中崎翔太が踏みとどまっただけで残りはシーズン通して安定した投手は皆無。
途中で育成から支配下登録されたヘロニモ・フランスアが八面六臂の大活躍を見せなければと思うと正直、ゾッとしてしまいます。
こうなると「今季のカープは低調な投手陣を打線が昨年以上に支えて打ち勝った」と考えるのが自然ですが、上記の通り打線に関しても丸佳浩の予想外の量産による本塁打数以外は、2017年を軒並み下回る数字が並びリーグ全体で見ても1位なのが盗塁数ぐらいという結果。
もっとも、それでも得点数自体は1位ですからやはり打線に関してもそれでも破壊力はまだまだ凄まじいものだったと考えて良いかもしれませんが…。
このように大まかな数字だけ見ると攻守ともに数字が前年を下回っており、そうである以上は勝率や2位との最終的なゲーム差(今季は7.0)は頷けます。
素直に言えば、新たな戦力の躍動もありましたが、全体で見ればチーム力は徐々に衰退しつつあると言えるでしょう。
では、にも関わらず全体的に見れば、崩壊するどころか逆に勝ち星を重ね続けられた要素は何なのか?
そして、それを更に維持もしくは発展するためには何が必要か?
何回かに分けて少しそれを考えてみたいと思います。
(中編へ続く)