「悪化に歯止めがかからない現状」
「不甲斐ない投手陣を打線が救った事で3連覇は達成された」という意見に異論があるファンはさほど多くないかと思います。
現に全体的に数字自体は昨年よりも低下しつつも高い出塁率と長打率が奏功して得点力の維持に成功した打線に比べると投手陣は悪化に歯止めがかかっていないようにすら見えます。
広島東洋カープ2018年投手成績
※()は2017年の数字
※○数字はリーグ内順位
防御率4.12⑤(3.39③)
先発防御率4.26④(3.71③)
リリーフ防御率3.87③(2.77②)
WHIP1.41⑤(1.28③)
失点651⑤(540③)
与四球535⑥(476⑤)
完封6⑥(9④)
援護率5.35①(5.25①)
データを見て感想を言えば「悲惨」の一言。
今季のプロ野球は昨年以上に打高投低のシーズンであるという事は前回書きましたが、リーグ全体で見ても悪い方の成績が目立つ以上、今季は大きく後退したシーズンとしか思えず正直、この程度の投手陣でよくぞ3連覇を成し遂げたものだと関心すらしてしまいます。
特に失点数とWHIP、与四球の悪化については目を覆うばかりです。
これは一重に昨年以上に、ストライクゾーンで勝負が出来るほどの球威がある投手が少なくなったのではと思えます。
「驚異的なフランスアと不可解な中崎」
セクション毎の防御率を見ると、昨年は先発が振るわなかった一方でリリーフ陣が数字の上では奮闘したようにみえましたが、今季はどちらも総崩れ。
それもそうでしょう。
今季、途中から支配下登録されたヘロニモ・フランスアを除けば、防御率WHIP共にまともな数字を残したリリーフなど皆無なのは数字を見れば一目瞭然です。
広島東洋カープ2018年主なリリーフ
ヘロニモ・フランスア3勝4敗1セーブ19ホールド
防御率1.66
WHIP1.11
中崎翔太4勝2敗32セーブ6ホールド
防御率2.71
WHIP1.43
一岡竜司5勝6敗2セーブ18ホールド
防御率2.88
WHIP1.21
アドゥワ誠6勝2敗5ホールド
防御率3.74
WHIP1.46
上記4人以外はまったくお話にならない数字が並ぶことになるので割愛しましたが、それでもフランスアと並んで今季の救世主的存在と言われたアドゥワ誠も内容的には正直、平均以下の数値が並びます。
また、中崎翔太に至ってはWHIPが1.43というクローザーとしては考えられない天文学的な数字となっており、これで優勝決定まで無敗だった事実が超常現象だったかのように思えるレベル。
自身100セーブ達成時にファンに「胃薬を忘れずにお願いします。」とコメントした自他ともに認める「劇場型」のクローザーはセイバーメトリクス泣かせの投手でもあるようです。
これに、平凡極まりない一岡竜司の成績も加味して考えるとフランスアの存在が今季のブルペンでは一層際立っていた事が分かります。
一方で、8月に月間登板数「18」という21世紀にもなってあり得ない記録を達成するなどシーズン途中加入の投手としては異例ともいえる登板数を刻んだ割にはホールド数が一岡と同じくらいなのは気になります。
これは要するに得点差関係なく登板する機会が圧倒的に多かった証左でしょう。
これまでカープが「左腕不毛の土地」とも言えた最大の理由はこれまでの歴代首脳陣が「使える左腕がいたら潰れるまで使い回す」という方針を頑なに貫いたからに他なりませんが、残念ながら現首脳陣もその轍から抜け出せなかったようです。
更にいえば、来季から1軍投手コーチに配置されるのは現役時代にベンチからのメチャクチャな起用に耐え続けた経歴がある佐々岡真司。
正直、改善されるとは思えません。
願わくば、本当に僅差の場面以外でフランスアが投げないように済む左腕が登場すればよいのですが…。
「層が薄くなりつつある先発」
昨年のカープは軸とされた野村祐輔、クリス・ジョンソンがあまり振るわなかった代わりに薮田和樹が大躍進を遂げ、内容的には微妙ながらそれに引っ張られた岡田明丈や、大瀬良大地でローテーションを編成した形。
一方、やはりローテーションの軸でありながら昨年以上に振るわなかった野村祐輔と、それなりの活躍を見せたクリス・ジョンソンに昨年の薮田以上の大躍進を見せた大瀬良とこころまでは昨年同様でしたが、薮田が「野球以外の部門で活躍の場を求めてしまった」のを始め、今季はそれに続く投手がなかなか見当たらず5人目以降の先発投手に至っては最後まで暗中模索が続きました(一応、最後になって九里亜蓮が出ましたが…。)。
広島東洋カープ2018年主な先発
大瀬良大地15勝7敗
防御率2.62
WHIP1.01
クリス・ジョンソン11勝5敗
防御率3.11
WHIP1.28
野村祐輔7勝6敗
防御率4.22
WHIP1.39
この先発陣の層が薄くなった事が昨年以上の投手成績の悪化に繋がっているように思えます。
やはり、前田健太や黒田博樹のように自身の成績や圧倒的なキャプテンシーで他者を引っ張れるエースが存在しない事がここに来て影響しているのかもしれません。
一応、それでも年間二桁もしくはそれに準ずる成績を残した投手だけでも6人程度はいる訳ですから頭数はいるように思えます。
しかし、大瀬良のように躍進した投手がしっかりと来季も活躍して地歩を固める事が出来なければ今度こそ崩壊してしまうのは容易に予想出来てしまうのも確かです。
単なる主戦から脱却したエースの登場は不可欠でしょう。
「これまで通りの援護は期待出来ない以上は…。」
ここまで見てきた通り、一部で奮闘した投手が各セクションには存在しましたが、全体的に見れば今季のカープの投手陣の成績はおよそ優勝チームに相応しいとは思えない…というより一歩間違えれば下位への低迷も考えられるぐらいに酷い成績だったとしか言いようがありません。
正直、「維持」が目標である打線とは異なり来季の投手陣にとっての目標は「再建」と考えるべきと思えるぐらいです。
それでもこのチームが優勝できたのは一部の奮闘した投手が負担に耐えた事と、異常な数値を稼いだ援護率の高さに他なりません。
しかし、その高い援護率をもたらした打線も核となる丸佳浩が流出した事で「再建」側に回ってしまう可能性も出てきました。
つまり前回、現有の戦力の足し算だけでは丸の穴を埋めるのは不可能と断じましたが、その分投手陣が早く再建を進める必要があるという事です。
それが不可能なら今季は打線の援護により猶予を貰えた形の投手陣が理由での崩壊が現実となってしまう可能性は残念ながら高いように思えます。
参考にしたサイト様
・「日本野球機構」様
・「データで楽しむプロ野球」様
・「Baseball LAB」様
・「野球データノート(2018年)」様
http://npb.sakura.ne.jp/index.html