世界的な新型コロナウイルス蔓延によって延期に延期を重ねたプロ野球がいよいよ今週、開幕します。
未だに不安定に増減を繰り返す感染者数の情報などを見て眉をひそめる方も多いかと思われますが、日本で最大規模のスポーツ興行の主催者として先陣を切って開幕を決めたNPB及び関係機関の決断は敬意を表するに値するものでしょう。
やはり、このような興行の再開をする為にはどこかが先陣を切る必要がありますし、興行の規模のうえでもその責任を果たすに足るのはプロ野球かJリーグしかないのですから。
とはいえ課題や懸念は山積みです。
勿論、コロナウイルスの感染拡大予防という観点がメインですが、それはプロ野球だけの問題ではないのでここでは敢えて書かず、それ以外の競技面、観戦文化の面で考えてみたいと思います。
競技面においては感染予防として地域で集中開催する必要に迫られて故に長期ロードを交互に繰り返すうえに6連戦が連続する過密かつ歪極まりない日程に加えて開幕延期に伴い一度は全チームがチームを一旦開催して選手が自主トレからやり直さなければならないという状況に陥りましたが、その影響は甚大でしょう。
プロ野球選手というのは基本的に昨年のシーズン終了から秋キャンプ、自主トレ、春キャンプなどで春からのシーズンを通して活躍できる体力や技術を養っていくスパンを何年も続けてきた人たち。
選手によってはそうでもないかもしれませんが大半の選手は緻密かつ綿密な計画に沿って自身の心身のピークを3月の開幕に合わせて鍛えてきた訳ですから、それを一度御破算にしてやり直すというのは常人離れした身体能力を持つプロのアスリートとはいえ非常な負担が伴います。
従って、今季はどのチームでも故障者が続出しても何ら不思議ではありませんし、防御率や打率では歴史上最悪の数字を更新したり失策数の大幅増加など競技面でのレベルの低下も避けられないかもしれません。
また、私達カープファンを含めたプロ野球ファンも観戦を楽しむ文化的な側面で多くの変化の前に戸惑う事が来年以降も続くかと思います。
日本のプロ野球における球場観戦といえば、ナイターの球場で飲むビールに鳴り物応援、ジェット風船などの試合中の各種アトラクションですが、今季に関してはそのいずれの風景も姿を消すのはまず間違いありません。
また、来季以降に通常どおりシーズンを開催出来たとしても一部は再開出来ない可能性もあります。
特に鳴り物応援の存在は元来、なんでもかんでもアメリカと同じにしたがる一部の被占領民根性まるだしの人たちに毛嫌いされていましたし、個人情報が晒されやすいSNSの発展などの影響でなり手の減少傾向にありました。
鳴り物応援自体は良くも悪くも日本のプロ野球独特の観戦文化ではありましたが正直、今季の騒動をきっかけにその姿は当分復活することはないばかりか、やがて消えゆくのではないかと予想されます。
ジェット風船についてはやはり衛生面で元々眉をひそめる人たちが一定位数存在していたのも確かです。
2009年の新型インフルエンザ蔓延を機に神宮球場が全面禁止にした事例が記憶に新しいですが、やはり同じようにこれを機に使用を禁止する球団が続出するかと思います。
球場に一度来た事がある方なら分かるかと思いますが、球場で野球を観戦するというのは単純に選手のプレーを見るという為だけでなく球場全体の雰囲気や球場でしか体験できないものを楽しむ目的で来ているファンも多く存在します。
従って、これだけこれまで当たり前に楽しんでいた球場の観戦方法が変容すればこれまでほとんどの球団が過去最高を記録していた観客動員数も来季以降もコロナウイルスへの忌避感以外の理由でも大幅に減少する可能性が危惧されます。
そうなると私の愛する広島カープにとっては今季の開幕は単なる順延というだけでなく、昨年まで続いた好況に水を差され経営上大打撃を負った矢先での生き残りをかけた戦いの始まりを意味する事にもなってきます。
開幕こそはしますが、今季はまずは無観客で開催となりこれまでのように球場を満員にして試合を開催するのはほぼ不可能な状況。
今更、言うまでもありませんがカープは損失を補填する親会社が存在しない松田一族による個人所有の球団。
ウイルス蔓延によるシーズン延期の影響で、Jリーグの大半のチームが赤字転落なったばかりかサガン鳥栖のように極めて深刻な経営危機を迎えたチームすらありますが、カープもカープで入場者収入がほぼ見込めない今季は同じく赤字転落に陥る可能性が高く、それは球団存続の危機に直結します。
また、カープが所在する広島市自体も政令指定都市としては規模が極めて小さい都市であるうえに財政状況も壊滅的でカープが危機に陥っても救いの手を差し伸べる力があるとは到底思えません。
こうなるとファンの一人ひとりが意識してグッズを買うなりして少しでも球場に行けない代わりの手段で少しでも経営を支えていく覚悟を見せなければならないのかもしれません。
やはり最後に頼るべきなのはカープ創成期において球団存続の危機に立ち向かった「7人の無名のファンの伝説」に代表されるようなカープを物心両面で支えてきてくれた有象無象のファンの行動と声なのですから。