吹けよ風!打てよアレン!!

カープと趣味の日記

蘇った歓呼の中で(カープ2023回想)

コロナ禍により、およそ3シーズンに渡って続いた応援の制限が遂に解除されて鳴り物応援が戻って来た2023年シーズンは阪神タイガースが38年ぶりの日本一を飾ると言う形で幕を閉じました。

これにより12球団では唯一平成以降で日本一の経験が無い「昭和に取り残された球団」となってしまったカープですが、順位は5年ぶりのAクラスかつ最終戦までもつれこんだものの18年ぶりの2位。

この結果はあまりにも低かった下馬評を覆す結果を残す事であり私を含めて多くのファンに驚きをもたらしました。

更に驚きなのは選手個々の成績を見ると突出した選手が少なくタイトル獲得者も球団史上初の最優秀中継ぎ賞に輝いた島内颯太郎とキャリア初のベストナインとなった西川龍馬のみという事。

特に打撃成績に関しては酷く本塁打に至ってはあまりの確実性の低さから今季限りでの退団が決まっているマット・デビットソンの19本塁打を除くと、主要な成績はタイトルを獲得したとはいえ故障がちで辛うじて規定打席をクリアできたに過ぎず、決して高い数字を残したとは言い難い西川が独占という低調さ。

これに加えてチームを率いたのが指導者経験皆無であった新井貴浩監督でしたから、この結果はまさに奇跡としか言いようがありません。

リーグ3連覇から一転して4年連続Bクラスと低迷期に入ったチームがいかにしてこのような奇跡を起こす事が出来たのか?

正直、例年以上にかなり難しい事になりそうですが、改めて考えてみたいと思います。

 

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2023年カープ チーム成績

74勝65敗4分(2位)

得点493(5位)

失点 508(5位)

打率 .246(4位)

本塁打 96本(4位)

出塁率 .304(5位)

長打率 .357(4位)

盗塁 78(2位)

犠打 96(4位)

先発防御率 3.20(5位)

リリーフ防御率 3.14(3位)

与四球 400(4位)

WHIP 1.24(5位)

失策 82(5位)

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改めて今季のカープの数字を並べ見ましたが、比較的充実していたと思われていた投手成績も含めていずれもリーグ内で3位以上の成績がほとんど皆無でなんとリーグ2位となった盗塁数と3位であったリリーフ防御率のみ。

更にリーグ1位に至ってはどの部門でも0という結果で正直、どう見てもリーグ2位どころかAクラスに終わったチームのそれではなく頭を抱えてしまいました。

 

今季のチームを引っ張ったのは間違いなく投手陣だったのですが数字を見てみると突出しているものは限定的だったように見えます。

まず先発陣ですがローテションでは5番手以降の投手が最後まで固定しきれなかったばかりかシーズン終了後に手術する事となった大瀬良大地の不振もあり、最終的にまともに機能していたのは床田寛樹、森下暢仁、九里亜蓮のみ。

うち二桁勝利を挙げられたのは床田のみでその床田にしてもプロ入り初の10勝目を8月半ばに挙げて以降はたったの1勝と息切れは隠せませんでした。

また、新たな若手の台頭もなく辛うじて結果らしきものを見せたのは4勝を挙げた森翔平ぐらいですが、その森にしても投球内容は低調そのものでさほど将来性を感じさせるものではありませんでした。

上記の通り大瀬良は手術による影響があるうえに元々衰えを隠し切れない状態という事も考えると来季以降のローテションの構築は大変厳しくなりそうです。

 

一方で、投手出身の前任監督が何一つ整備できなかったリリーフ陣に関しては近年稀に見る充実ぶりであったと思います。

ルーキーイヤーから2年連続30セーブ以上を記録していた栗林良吏が前半戦は故障と不振に陥りましたが、その穴を矢崎拓也が埋めたうえに上記の通り島内が球団史上初の最優秀中継ぎ投手賞を飾る活躍を見せましたし、ニック・ターリーはちゃっかりチーム4位の7勝を挙げました。

また、これに大道温貴がシーズン後半から活躍を見せるなど新たな戦力の台頭もありました。

まあ、そのリリーフ陣にしても夏場以降は疲労の為か、島内、矢崎がいずれも精彩を欠く場面が増えましたし、そもそも島内の62試合登板は明らかな投げさせ過ぎで来季が心配になります。

 

2000本安打を達した強打者が監督に就任したにも関わらず開幕2試合連続で完封負けを喫するなど当初から低調で投手陣の足をひっぱり続けたのが打線。

本塁打と盗塁以外の成績でチーム1位だったのはいずれも故障がちで離脱した期間も多く平凡な数字が並ぶ西川という事からも分かる通り、本当に今季は悲惨そのものでした。

昨年途中から加入して今季はシーズンフルでの活躍が期待された秋山翔吾もシーズン中盤以降は完全に低迷し、2年目だったライアン・マクブルームは完全な期待外れでした。

また、チーム最多の本塁打を放ったマット・デビットソンも結局のところは「たまに本塁打を打つかもしれない守備固めの選手」に過ぎずマクブルームと揃って退団となったのは残念ながら当然の結果だと思えます。

何より、坂倉将吾のポジションを今季から捕手に固定したのは完全な失敗でした。

元々、純粋に捕手としての能力は凡庸であるに過ぎない彼のポジションを固定した事で起用の幅が狭まり肝心の打撃でも低迷を招いてしまった事実は重たいと言えるでしょう。

一応、シーズン終盤に小園海斗に末包昇大と伸び悩んでいた中堅どころがある程度の活躍を見せてチームを引っ張ってはくれましたが、それ以外に若手で出て来た選手はやはり皆無で将来性という点でも大変疑問を感じます。

 

また、打撃以外の野手の働きに関してはどうだったかと考えるとこれまた低調な打撃を補えたと言えるものはありません。

盗塁数については上記の通りリーグ2位の数字で「機動力野球復活」というお得意の代名詞が中国新聞辺りで上がりそうですが、盗塁数1位だったのがほぼ代走選任だった羽月隆太郎だった事からも分かる通り、低すぎる出塁率長打率にあってはほとんど意味をなしたとは思えません。

また、守備に関しても失策数はリーグワースト2位で開幕3戦目の野間峻祥による「清水建設事件」を代表するようなとんでもない失策もところどころ見られました。

更にここまで10年連続ゴールデングラブ賞という驚異的な記録を残した菊池涼介が遂にその連続受賞記録が止まってしまうという出来事もあり、決して守備力に関しても突出したものはありませんでした。

 

と、数字に加えて個々のセクションの印象も重ねて見ましたが改めて何故このチームが2位になれたのかが分からなくなってきました。

そうなると、就任1年目で74勝を挙げたうえで2位という球団史上でも最高の成績を収める事となった新井監督の手腕によるものは大きかったという事でしょう…と言いたいのですがこれまた「何が良かったのか?」というと少々困ってしまいます。

上記の通り、長らく再建できていなかったリリーフ陣を立て直したという点は分かりやすい功績ではありますが、それ以外の部分ではチーム全体で残した数字はさほど高くないばかりか若手の起用がそれほど多い訳でもなく、どちらかと言えばベテランを重用する傾向が目立ったように思えます。

また、プロ入り10年で本塁打を3本しか放っていない上本崇司を4番に据えたり、夏場に疲労が目立った島内、矢崎に代わってドリュー・アンダーソンと中崎翔太を起用するなどファンを驚かせる起用を見せたものの、それについても一時しのぎ的なものに過ぎません。

とはいえ、これだけ能力的に劣る選手や低迷している選手が大半のチームを率いて2位という結果をもたらす事が出来たという事は、結局のところ選手のモチベーションを引き出す事が非常に上手かったという事かと思います。

だからこそ、シーズン全体で見ればたいした数字では無かったもののスポット的に活躍する選手がところどころで出て来たという事なのでしょう。

何ともふんわりした話ではあるのですが私としてはそれぐらいしか今季の躍進の要因を考えるしかないのです。

まあ、説明できなから奇跡という事で…。

 

それにしても、順位のうえでは望外の好成績を残せたものの選手個々を見れば内情はボロボロで、若手の台頭もほとんどなかった事を考えると来季以降は希望よりも不安の方が勝ります。

これに加えて既に打撃成績のほとんどでチーム1位を独占していた西川がFAによりオリックスバファローズへ移籍が決定し選手層はますます先細りましたし、大瀬良や秋山も手術に踏み切り来季以降は不透明とあって暗澹たる思いすらします。

 

まあ、今から来季の事を心配しても仕方ないので残り少ない今年は改めて新人監督が成し遂げたこの素晴らしい結果を噛みしめた方が良いのかもしれません。

コロナ禍により向こう数年復活はないと考えていたスクワット応援ジェット風船も戻って来て、シーズン中盤以降にはもはや制限など単なる悪い夢でしかなかった事が分かった今季の喜びと共に。

栄光と苦難の30年に(エディオンスタジアム広島 最終戦によせて)

今季限りで広島市内中心部のエディオンピースウィング広島への移転が決まっているサンフレッチェ広島が昨日、エディオンスタジアムでの最後の公式戦開催を行いました。

対戦相手は期せずしてサンフレッチェと同じくJリーグ初年度から在籍する「オリジナル10」の1チームであるガンバ大阪

また、これまた偶然にも現状では最後に開催されている2015年Jリーグチャンピオンシップの対戦カードでもありました。

試合は、前半早々に満田誠のゴールで先制すると、以降も圧倒的なポゼッションで最後まで試合の流れを明け渡さず、中野就斗のJ1でのプロ初ゴール含めて3-0の快勝。

試合終盤には今季限りでの現役引退を決めていた名GKである林卓人を始め、柴崎晃誠柏好文といったこのスタジアムで長らく活躍し続けたベテラン達をピッチに送り込む事すら出来ました。

試合終了後の林による感動的なスピーチを含めた引退セレモニーもあり、見込まれていた3万人には僅かに届きませんでしたが2万9000人越えを動員してまさに有終の美を飾れたと言えるでしょう。

このエディオンスタジアム…ここでは昔から個人的には馴染み深いネーミングライツ導入前の「広島ビッグーアーチ」と呼びましょう…の思い出を振り返ると正直な話、かつての旧広島市民球場ほどの濃密なものはサンフレッチェ広島のサポーターの片隅にいる立場として恥ずかしながらさほど多くありません。

というより、1994年のアジア大会の際に招待で足を運んだ小学生の時以来、このビッグアーチにはあまり良い思い出というのがほとんど浮かばないというのが実情です。

以降、成人するまで片手で数えるほどしか足を運んでいないのですが、とにかく覚えている事は観客が少ない事と、山奥で行きも帰りも大変であった事ぐらいの事…ついでに言えば私が行く試合で勝ち試合は全くなかった事ぐらいでしょうか?

未成年の時に最後に見たのは中学生の時でしたが、この時のチームは存続が危ぶまれるほど極端な財政難でチームが低迷していたせいか、ガラガラのスタンドで試合後に翻る「ビッグオーレ」にかえってもの悲しさを感じたのを覚えています。

まあ、あの当時は同じ広島に本拠地を置くカープ旧広島市民球場末期で年間動員が12球団でブービーという今では考えられないほどの不入りが続いていて、これまた球団存続の危機に晒されていた時期ではあるのでしたが…。

 

もっとも、私の個人的な思い出を持ち出さずともこの広島ビッグアーチサンフレッチェ広島の30年を振り返ると「苦難の歴史」という言葉が大部分を占めていたように思えます。

1990年代に建築されたスタジアムではあるものの当初から広島市の見込みの甘さから来る利便性の悪さによる動員の伸び悩みと財政難による設備の陳腐化は目を覆うばかりで、はっきり言わせて貰えれば「バブル期に調子に乗った地方都市が作った負の遺産の典型例」というイメージが大きかったです。

その最たる例が2002年の日韓ワールドカップの際は開場から10年程度かつ中四国最大級の動員が可能なスタジアムであったにも関わらず規定を満たせず、それを広島市が拒否した為、開催地から外されたという出来事。

あの時、テレビカメラの前で落選を伝える電話に対して当時の広島市長だった平岡敬が逆切れ気味で受け応えした無様な姿は広島市の歴史に残る恥として今でも心に残っています。

今季は最終年という事で春と夏に2度ほど広島ビッグアーチには観戦に訪れましたが、2万人に満たない試合であるにも関わらず、駐車場はなかなか予約が取れずいずれもキャンセル待ちで辛うじて確保出来ただけでなく場所も遠く帰りはかなり大変でした。

昨日の試合に関しても多くのサポーターが訪れはしてくれましたが、果たして私の生まれ故郷である広島市安芸区に住んでいる人があの場所から試合終了後に公共交通機関を使って帰宅したとしたら一体何時にたどり着けたのだろうかと返って心配になってしまったほどです。

こういう事情もあって移転前最終戦としてのセレモニーに関しても別れを惜しむというより来季以降の新たなスタジアムを心待ちにするという気持ちの方が選手もサポーターの大半も多数を占めていたのではないかと思います。

 

さて。

ここまで移転するスタジアムに対して後ろ足で砂をかけるような事をうっかり書いてしまいましたが…勿論このビッグアーチにも「栄光の歴史」はあります。

特に2012年のサンフレッチェ広島のJ1初優勝を決めた試合は関東からテレビで見ていましたが、常に閑散としているイメージがあったビッグアーチがほぼ満席になった姿には長らく低迷が続いたサンフレッチェ広島の初タイトル獲得と共に感激した事を覚えています。

また、上記の通り、ワールドカップ開催については残念な結果となりましたが、日本代表が初優勝した1992年のアジアカップ開催や、首都以外では初開催となる1994年の広島アジア大会開催は間違いなく歴史に残る快挙として地域の誇りとして語り継ぐべきものです。

個人的には長らくホーム現地観戦で勝てない状態が続いていた事についても今年夏の川崎フロンターレ戦でマルコス・ジュニオールの素晴らしいゴラッソと後半ATラストワンプレーでのチャンスを決めた満田誠の勝ち越しゴールなどで勝利を得る事が出来た喜びは忘れがたい思い出です。

何よりセレモニー最後に歌われた「イージュー☆ライダー」と林卓人のチャントがリフレインで響き渡る姿は感動的で私も画面越しに口ずさみながら涙が溢れるのを止められませんでした。

この美しい歌声が来年開場するエディオンピースウィング広島で引き続き響き渡る事を心待ちにしたいと思います。

また、サンフレッチェ広島は移転するものの引き続き広島ビッグアーチ中四国で最大級のスタジアムである事に変わりはありません。

これから先の見込みがどうなるかは分かりませんが引き続き地域のスポーツ振興の拠点の一つとして機能し続けてくれる事を期待したいものです。

10/20(金)●自由な挑戦者足りえず(カープ2023)

阪神タイガース4-2広島東洋カープ

CSファイナルステージ第3戦(カープ3敗)

阪神甲子園球場

 

勝利投手 桐敷1勝

敗戦投手 床田1敗

セーブ投手 岩崎1勝2セーブ

 

本塁打

(C)-

(T)-

 

打点

(C)坂倉①堂林①

(T)ノイジー①坂本②森下①

 

投手

※数字は自責点

(C)床田③-矢崎①-大道-島内

(T)大竹②-桐敷-岩貞-石井-島本-岩崎

 

先発床田は3回まで無安打も中盤以降は打ち込まれ6回3失点で降板。

打線は4回表に坂倉の適時打で先制し10安打を重ねるも2得点に留まる。

7回裏にも2番手矢崎が打ち込まれて失点を喫し3連敗でCS敗退が決まりシーズンを終える。

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第1戦、第2戦と連敗を喫し後が無くなってしまった状況。

せめて一矢報いて欲しいというファンの思いも裏腹に今日も攻守で勝負弱さを見せつけて惨敗でシーズンを終える事となりました。

相手チームの阪神は短期決戦であっても、ほとんどシーズン中と戦い方を変えずまさに泰然自若の姿を見せつけた末に余裕で勝ち抜けたのですから両チームの実力差は多少の奇策でどうこうできるレベルではなかったという事です。

 

前日7安打で1得点に終わった打線は、今日は10安打で2得点と得点圏での勝負弱さだけが目立ち、その姿からは試合から怯えて逃げようとするかのような情けない姿を見せただけでした。

失うものが何もない短期決戦であるにも関わらず見せたこの醜態からは最後まで「自由な挑戦者」という楽しさは感じられなかったのは大変残念です。

 

レギュラーシーズン同様に最後の最後まで足を引っ張り続けた「いつもの打線」に対して投手陣は健闘を見せたと言えるでしょう。

特にリリーフ陣は最終的に自責点を喫したのは栗林良吏と矢崎拓也のみ。

中でもCSファーストステージに続いて得点圏に走者を背負った状況で好救援を見せた大道温貴の活躍は感動的ですらありました。

これだけリリーフ陣がシリーズ通して頑張りを見せていたのですから今日の試合に関しては先発床田を少々引っ張り過ぎた印象が残ります。

ここから4連勝をしなければならないのですから早めの継投は取りにくいという事情はあったでしょうが、それを差し引いても動きが鈍いベンチからは「高校球児のように戦う」という先週の監督の発言のようなひた向きさを感じるのは難しかったです。

 

結局、上記のように何一つ見せ場も魅力もなく単なる「ドアマットチーム」に終始してシーズンを終えた形のカープ

しかし、この程度のチームだったからこそ圧倒的な下馬評の低さを覆し5年ぶりのAクラスに28年ぶりの2位と好成績を収めた事は改めて賞賛に値するでしょう。

指導者経験のない新人監督であるにも関わらずこの驚異的な戦績を残した新井監督以下、今季のこのチームを応援出来た事を改めて誇りにしたいと思います。

 

10/19(木)●あまり試合が楽しく無さそうな打者たち(カープ2023)

阪神タイガース2×-1広島東洋カープ

CSファイナルステージ第2戦(3勝)

MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島

 

勝利投手 岩崎1勝

敗戦投手 栗林1敗

 

本塁打

(C)-

(T)-

 

打点

(C)小園①

(T)木浪①

 

投手

※数字は自責点

(C)大瀬良-島内-栗林①

(T) 伊藤将①-石井-島本-ブルワー-岩崎

 

先発大瀬良は末包の失策で2回裏に失点も以降は安定して7回を投げ抜く。

打線は初回に小園の適時打以降は7安打を重ねるも追加点を奪えず。

9回裏に栗林が適時打を浴びてサヨナラ負けを喫しシリーズ2連敗。

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CSファーストステージ第1戦から床田寛樹、森下暢仁、九里亜蓮とこちらが用意できる好投手を起用し続けてエアーポケットに入ったようなこの試合。

4人目の先発として起用されたのは大瀬良大地という、たいした面白味も高揚感も感じない人でした。

今季も相変わらず低迷ぶりを見せ続ける彼に期待しなかったのは私だけではなかったかと思いますが…意外にもこの大瀬良が善戦。

2回裏に末包昇大がなんでもない単打を後逸するという考えられないほどの幼稚なエラーで失策するという不幸もありましたが、最終的には7回まで自責点0の1失点で投げ抜くという今季最高とも呼べる投球を見せてくれました。

限界説が囁かれて久しいベテランの久しぶりの頼もしい姿に打線も奮起となればどれだけドラマティックだったかと思いますが、現実はそうは甘くありません。

それどころか、昨日同様にいつも通りの貧打に加えて上述の末包のやらかしを見て分かる通り守備でも致命的なミスまで出て足を引っ張るだけでした。

7安打も重ねながら好機で悉く凡退を重ねる姿には失うものは何もない挑戦者として試合を楽しむ姿勢は見られませんでしたし、むしろ無意味に緊張と不安を抱えているようにすら感じられました。

これだけ好機で打てないという事は、レギュラーシーズン終盤は勿論、先週末のCSファーストステージとたいして変わらないのですが、それにしても大変残念な事です。

全く問題にならない展開で明日、敗れれば今季が終了となるのですが、せめて一矢ぐらいは報いる姿は見たいものです。

もっとも昨日今日の打線を見る限りそれも難しい事かと思います。

10/18(水)●いつも通りの試合(カープ2023)

阪神タイガース4-1広島東洋カープ

CSファイナルステージ第1戦(カープ2敗)

阪神甲子園球場

 

勝利投手 村上1勝

敗戦投手 九里1敗

セーブ投手 岩崎1セーブ

 

本塁打

(C)-

(T)森下1号①

 

打点

(C)秋山①

(T)森下①村上②近本①

 

投手

※数字は自責点

(C)九里④-アドゥワ-中崎-アンダーソン

(T)村上①-桐敷-石井-島本-岩崎

 

先発九里は3回まで無失点も4回裏に同点弾を浴びると5回に3失点。

打線は3回表に秋山の犠飛で先制も以降は繋がらず散発4安打1得点。

先発が試合を作れず貧打も響いてCSファイナル初戦で惨敗を喫する。

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10年ぶりにCSファーストステージを突破して乗り込んだ甲子園。

リーグ2位としては8年ぶりにファーストステージを無敗で切り抜けた勢いで「まさか」という展開を期待したファンは少なくなかったようですが現実はそこまで甘くはありませんでした。

「高校球児のように戦う」と先週日曜日の試合の後に監督が述べたコメントとは裏腹に今日の試合はこの球場でたった2勝しかできなかったレギュラーシーズン同様のいつも通りの展開に終始して惨敗となりました。

今季一気にリーグ最高の投手に成り上がった村上頌樹は序盤から球数を重ねるなど、明らかに初めての舞台に緊張しているように見えましたが、そんな彼を打線はいつもと同じように打ち崩せませんでした。

打線はファーストステージで不振だったマット・デビットソンと堂林翔太を外し田中広輔に加えて一塁に韮澤裕也を起用するというサプライズがありましたが、全く機能しないばかりか韮澤は守備で村上の痛烈な打球を捕れず勝ち越しを許した事ぐらいしか印象に残りませんでした。

 

一方、先発の九里亜蓮もCS第1戦から中3日で投球が祟ってか先制点を得た4回裏に同点弾を打たれると5回裏には一挙3失点で試合を作れませんでした。

CS通じて適時打が2本しか出なかったなど、とにかく打てない打線にあって先発はこうでは勝ち目などある筈がありません。

また、とにかく積極的な継投を見せていたファーストステージを考えれば5回裏に村上に勝ち越し打を許した時点で九里を降板させなかった事は異論のあるファンもいる事かもしれません

もっともこれに関してはファーストステージに比べて4勝しないといけない長丁場であるのに加えてビジターでの試合である事を考える間違いとも言い難いです。

 

まあ、結局のところ奇策を多少は用いたところで選手個々の実力が劣ればあまり意味がない時の方が多いという事なのでしょう。

もっとも、このチームはこの舞台に立てている事自体が奇跡のようなチーム。

また、ビジター席が僅か2ブロックしか割り当てられなかっただけあって近年でも稀に見る圧倒的なアウェイの雰囲気ではありますが、選手たちにはむしろこの状況を楽しんで気楽にプレーして欲しいものです。

なにしろこのチームのは失うものや失望する事など何一つないのですから。

10/16(日)○「明日なき戦い」を制す(カープ2023)

広島東洋カープ4-2横浜DeNaベイスターズ

CSファーストステージ第2戦(カープ2勝)

MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島

 

勝利投手 島内1勝

敗戦投手 上茶谷1敗

セーブ投手 栗林1セーブ

 

本塁打

(C)西川1号①末包1号①

(De)-

 

打点

(C)西川①末包①田中①秋山①

(De)関根①ソト①

 

投手

※数字は自責点

(C)森下-大道-中崎②-ターリー-島内-栗林

(De)今永②-伊勢-エスコバー-上茶谷②-石川-森原

 

先発森下は3回までノーヒットも5回1/3で降板。

打線は初回に西川の本塁打で先制も以降は繋がらず。

7回表に同点に追いつかれるも8回裏に田中の適時打で勝ち越してCSファーストステージを突破。

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栗林良吏がネフタリ・ソトに投げた投球がストライクとコールされて試合が終わった瞬間…「宮島さん」を歌いながら空を見上げたら広がった、抜けるような秋空を忘れる事はないでしょう。

球団史上6年ぶりの出場となったCSファーストステージは2連勝という最高の形で突破を決める事となったばかりか、セ・リーグで2位のチームがファーストステージを突破するのは実に8年ぶりのことです。

「2連敗で敗れる事は勿論、無得点で敗れる可能性が高い」というような事をCS初戦の前日に私は書きましたが…。

結果的にそれは大きな間違いであり私自身の不明と不信心さを示しただけの恥さらしな拙い文章である事が示された事は大変嬉しい事です。

もっとも、試合2時間30分前から大混雑になっていた広島駅からの道のりに閉口しながら球場に入った時点でもこのような結果は予想していませんでした。

凄まじい争奪戦の中で運よく確保できたライト外野席の片隅で試合開始を待つ間も「この時期にマツダスタジアムカープを見られるだけで幸せな事」としみじみした思いの方が強かったように思えます。

何度も書いていますが、あれだけ選手層に劣るチームが2位でシーズンを終えた時点で既に大きな奇跡なのですから…。

 

しかし、新井監督やカープの選手たちはそれだけで終えようとは思わなかったようです。

先発の森下暢仁はシーズン終盤は低調な投球に終始して二桁勝利を逃した事からも分かる通り決して万全な状態とは言えませんでしたが、3回まで無安打に抑えるなどなかなか援護に恵まれない展開で好投を見せてくれました。

こういう投球を見せてくれているのですから、なかなか代えるのが難しいという部分はあったのですが、6回に1死3塁という危機を迎えたところで無失点であったにも関わらず降板させて昨日に続いて大道温貴を投入したのは少々驚きました。

昨日の床田寛樹も決して悪い投球でなくそのまま続投させても6回2失点辺りで凌いでくれたとは思えますが、とにかく遮二無二同点になる事を避ける為に早めに継投に切り替えた形。

このような芸当はレギュラーシーズンでやったらまず非難の的になるでしょうが短期決戦となると違ってきます。

これは先発をやたらと引っ張る傾向にあった前任者は勿論、リーグ3連覇を果たした時期のポストシーズンでもあまり見られなかった光景です。

また、この起用に昨日に続いてまさに魂を込めた投球で大田泰示、牧秀悟と強打者を抑えた大道も見事でした。

もっとも、その継投も矢崎拓也の発熱による登録抹消という非常事態で止む無く投入せざるを得なかった中崎翔太の無様な投球により水泡に帰しそうにはなったのですが…まあこの辺りは仕方ない事です。

一方、初回に西川龍馬の本塁打で先制したものの昨日に続いて中盤までまともに得点の機会がなかった打線は、終盤にようやく繋がる事となりました。

8回裏に内野安打と野選などにより無死満塁で迎えた場面で起用された代打が坂倉将吾ではなく、田中広輔だった事にため息をもらしたのは私だけではなかったかと思います。

それだけに初球からいきなり決勝打を放ったのは大変幸運な事。

どういう経緯でこういう決断を新井監督が下したのは私のような凡人にはさっぱり分かりませんが、とにかくこれもまた驚くべき結果です。

もっとも、この決断の是非よりもそこに至るまでの過程の方が大事ではあります。

このカードでの好機は上記の通り、本塁打を放った西川にすら犠打を試みさせた事を代表にとにかく犠打や盗塁などを駆使してとにかく得点圏に走者を進めさせた事によるもの。

これまたレギュラーシーズンではあまり見られないですし評価されにくい戦い方ですが、逆に短期決戦を戦ううえだと有効でした。

上記のように明らかに攻守で個の力で劣るカープがこのシリーズを2連勝で駆け抜ける事ができたのは勿論、ファンの声援もありますが新井監督が試合終了後のセレモニーで「高校球児のように戦う」と雄弁したようにリスクを恐れない積極的な継投と積極的な走塁と「明日なき戦い」という戦い方をチーム全体で共有出来ていたからと言えるでしょう。

このシリーズを突破したとしてもこの先は更に厳しい戦いが待っていますが、次の試合はどのような驚きを見せてくれるか大変楽しみにすら思えます。

 

試合とセレモニーが終わって帰宅するファンでごった返して、新幹線が来るまでまともに座る場所もなく、広島駅からは既に駅弁が悉く店頭から消えていて閉口しましたが…。

この試合を思い起こすとそのような事は些細な事に思えて、更に4時間以上を要する新幹線での移動も苦にならないのは不思議なものです。

「久しぶりのCSで地元での開催なんて向こう何年あるか分からないから…」という大変消極的な理由でチケットを買って帰省した広島でしたが…かえって活力を貰えた気分です。

10/14(土)「無」から「有」を作り出す(カープ2023)

広島東洋カープ3×-2横浜DeNAベイスターズ

CSファーストステージ第1戦(カープ1勝)

MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島

 

勝利投手 ターリー1勝

敗戦投手 ウェンデルケン1敗

 

本塁打

(C)-

(De)宮崎1号②

 

打点

(C)西川①菊池①秋山①

(De)宮崎②

 

投手

※数字は自責点

(C)床田②-大道-矢崎-島内-栗林-九里-ターリー

(De)東-上茶谷-伊勢-ウェンデルケン

 

先発床田は5回まで無失点も6回に宮崎から2ランを浴びて降板。

打線は5回まで2安打の拙攻も8回裏に羽月の好走塁から菊池のスクイズで追いつく。

終盤は再三の好機を逃すも11回裏に秋山の適時打が出てサヨナラ勝ちで5年ぶりのCS初戦を制する

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チケット発売から僅か10分もたたないうちに完売するという大きな盛り上がりの中で迎えて5年ぶりかつ地元で迎える事となったCSファーストステージ初戦。

とはいえ展望でも書きました通り大変困難な試合になることは容易に想像できました。

なにしろ相手先発はリーグ最多勝最多勝率のタイトルを獲得しただけでなく今季のカープ戦は4勝負けなしで打ち崩すのが不可能にすら思える東克樹。

案の定、元々貧打の打線は3回裏を除けば5回まで好機すら作れず、まさに手も足も出ないという展開。

更に無失点で何とかしのぎ続けた先発の床田寛樹も6回に宮崎敏郎に2ランを浴びてしまいました。

短期決戦かつ好投手同士の投げ合いとなれば必然的に首位打者打点王最多安打と今季のタイトルホルダーをはじめ個の打開力に優れるベイスターズが有利なのは必然と思える状況。

直後の6回裏に西川龍馬の犠飛で1点を何とか返しはしましたが、非常に重苦しい雰囲気が感じられました。

しかし、8回裏にその状況を一変させたのが四球で出塁したマット・デビットソンの代走で出場した羽月隆太郎の走塁でした。

犠打で2塁に進んだ直後に見せた3塁への盗塁と直後の菊池涼介スクイズによる本塁突入は驚異的とすら感じられる迫力。

特に3塁への盗塁は長いことカープを応援していますが、あそこまで完全にモーションを盗んでの三盗というのは見た記憶がありません。

それがこのポストシーズンという重大な局面で出るとは…正直、衝撃的ですらありました。

結果的にこのチームは堂林翔太によって長打がもたらされたのが実に11回裏という土壇場も土壇場だったことからも分かる通り相手チームと異なり一振りで試合を変えられる選手が皆無でしたが、彼の働きはそういう「無」の状態から菊池のスクイズ、ひいては秋山翔吾のサヨナラ適時打という「有」を作り出す芸当だったとすら思えます。

 

もっとも、この劇的な勝利を呼び込んだ根本の原動力はこのチームが2位でシーズンを終えられた事と同じく投手陣の頑張りです。

なかでも積極的なリリーフ陣の投入が祟って良いリリーフを使い切ってしまった延長戦になって、第3戦目での登板が予想されていたにも関わらず久方ぶりのリリーフでの登板となり何とか1回2/3を抑えた九里亜蓮の起用は大きな驚きでした。

上記の羽月といい、この九里といい、負けたら終わりという短期決戦での「明日なき戦い」に挑むひたむきさをベンチから感じさせられました。

これはリーグ3連覇を果たした時ですら感じられなかった事。

ベイスターズと比べてチーム全体の地力の差に変わりはありませんが、それを埋めるとすれば今日のような戦いぶりと言えるでしょう。