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カープと趣味の日記

11/07(土)●「掴み続けた19年間」(カープ2020)

広島東洋カープ0-2阪神タイガース

24回戦(カープ8勝13敗3分)

MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島

 

勝利投手 秋山11勝3敗

敗戦投手 中村祐3勝4敗

セーブ投手 スアレス3勝1敗25セーブ

 

本塁打

(C)-

(T)大山28号①

 

打点

(C)-

(T)木浪①大山①

 

投手

※数字は自責点

(C)中村祐②-菊池保-中田-ケムナ

(T)秋山-能見-エドワーズ-スアレス

 

先発、中村祐太が6回2失点の好投を見せるとリリーフ陣も無得点。

打線は、2塁すら踏めない散発3安打の拙攻で終始沈黙。

貧打による惨敗で連勝が7で止まり、石原の引退試合を飾れず5年ぶりのシーズン負け越しも確定。

引退試合の石原は8回守備から登場し現役最終打席はライトフライに終わる。

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今日の試合は19年間に渡って在籍し、長らく主力捕手としてチームの低迷期からリーグ3連覇まで屋台骨を支えた石原慶幸引退試合となりました。

ここまで積み上げた1620試合出場と1022本の安打数はいずれも捕手としては球団記録であり、2009年には球団史上捕手としては33年ぶりとなる二桁本塁打を記録。

2009年~2014年に記録した6シーズン連続サヨナラ打及び2018年に記録した38歳8ヶ月での1000本安打達成はプロ野球記録でもあります。

また、打撃だけでなく守備においても多くの評論家や指導者から絶賛されたキャッチング技術も素晴らしいものでした。

デニス・サファテの160km近い豪速球から林昌樹の漫画のように鋭い変化を見せたスライダー、果てはフルタイムナックルボーラーであるジャレット・フェルンデスの予測不能な軌道の投球まで捕球するというまさに球界屈指と呼べるものでした。

 

いずれも素晴らしい足跡ですが、それら以上にファンの記憶に残っているのは有名な「打席からジャンプしてのスクイズ失敗」や、ボールを見失って咄嗟に砂を掴んで進塁を防いだいわゆる「一握の砂」「併殺打崩れのどさくさに紛れて歩いて3塁へ進塁」「サヨナラ打撃妨害」など多くのファンを爆笑もしくは困惑させたプレーの数々かもしれません。

特に2006年2007年に記録した「スクイズ失敗」は当時がYou tubeニコニコ動画などの動画共有サイト黎明期であった事もあり、14年も前のプレーであるにも関わらずネットミームとしてカルト的な人気を誇っており今回の引退記念グッズの図柄にも採用されたぐらいです。

また、プロ野球史上3例しかない打撃妨害でサヨナラ負けを記録した捕手など恐らく世界中探しても彼ぐらいで今後も現れる事などないでしょう。

今回の引退を見て改めてそれらの映像を確認しましたが、「こんな話のネタが尽きない面白い選手が19年間も応援しているチームにいたのか」という気持ちにもなりました。

 

しかし、個人的には、上記の事柄以上にもっとも印象的なのは現役時代前半から中盤にかけて長らくチームも本人も続いた苦しい時期の記憶。

特にリード面においては球場で彼に対する汚い罵声や野次を聞かない日がないと言えるぐらいでした。

彼が入団した当時のカープといえばまさに「一面の焼け野原」と言えるぐらいに投手陣がボロボロだった時期。

言い方は悪いですが、プロとは名ばかりとすら思えるリードのしようもないクズ投手が大変を占めていたチームにあってそれを彼が守り立てないといけない苦労は並大抵の事ではなかったでしょう。

その後、前田健太の台頭や外国人投手たちの活躍をきっかけにしたチームの投手陣の質や層が向上し、彼自身も25年ぶりのリーグ優勝に貢献したうえで自身初のゴールデングラブ賞を獲得するようになって以降は上記のような野次はパタリと止まり、むしろ會澤翼などと比較して称賛されるケースが増えたようにすら思えます。

長らく続いた苦労と努力がキャリア終盤になって花開き報われて良かったと思える以上に真逆のキャリア中盤までの状況との落差を見て割り切れない不条理さも個人的には感じます。

私が、投手が打たれる度に安易に捕手のリードを批判するような風潮を嫌う理由はこの辺りで、これは我々ファンとしてもおおいに反省するべき事ではないかと思う次第です。

もっとも、打撃に関してはまったく最後まで期待しておらず彼がスタメンの試合では彼の打席をトイレタイムにしていたような私がそのような偉そうな事を言える義理はないでしょうのでしょうけれど…。

 

今日のプロ最終打席はライトフライに終わり、結果的に昨年晩夏の神宮球場でトイレに行く途中の通路で目撃した本塁打が彼の現役最後の本塁打になってしまいました。

試合自体も打線が二塁すら踏めない無様な打撃で5試合連続QSを記録した中村祐太の頑張りを台無しにするなど結果も内容も散々でした。

しかし、上記の通り苦労の方が大半だった現役生活を「幸せでした」と淀みなく言い切った引退スピーチはそれらを吹き飛ばすぐらいに素晴らしいものでしたし、セレモニー後に見せた盟友クリス・ジョンソンとの固い抱擁には目頭が熱くなりました。

また、完封目前の秋山拓巳を下げて石原の最後の打撃に同い年で今季退団が決まっている能見篤史をマウンドに送り出した矢野燿大監督以下の阪神タイガースの粋な計らいは感謝の念に耐えません。

 

キャリア前半中盤までのチームと自身の苦難からリーグ3連覇に貢献して報われたキャリア終盤の栄光まで。

最後は感動的なセレモニーと多くのファンからの惜別の声に彩られた石原が数え切れない球種と共にそのミットで掴み続けた19年間で私達に運んでくれたのはとても綺麗で見事な大輪の花だっという事かと思えます。

コロナ禍の球場で唄う事が出来なかった彼の応援歌の歌詞のように。

 

南の夜空に赤く

輝く一番星

広島に夢を運ぶ石原慶幸

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