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カープと趣味の日記

「クリス・ジョンソンという時代を私達は生きた」(カープ2020)

気づいたら知らない間に日本シリーズが終わっていた11月26日。

この日付けで正式にカープ球団よりクリス・ジョンソンと来季契約を結ばないという発表がありました。

シーズン最終戦直後に意図的な(としか思えない)球団関係者の不自然なリークを「大本営」こと中国新聞が大々的に報じた影響もあり半ば退団は既成事実化していたとはいえ、改めて現実のものとなると寂しいもの。

とはいえ、最終年となった今季の成績は0勝7敗で、外国人投手としては開幕から7連敗はリーグワースト記録と共に日本ワースト記録にも並ぶという散々なもので年俸や年齢を考えても退団は妥当な判断であったのも確かです。

しかし、同時にクリス・ジョンソンがここまで私達カープファンと歩んでくれた道のりは大変誇らしいものであり、その栄誉がたかが1シーズン程度の低迷で曇るようなものではありません。

 

思い起こせば彼が来日した2015年。

「リーグ優勝」という言葉すらとうの昔に忘れていた当時の私達の前に姿を表した最初のマウンドは衝撃的でした。

この年、爆発的な破壊力でリーグを制覇したスワローズ打線相手に僅か1安打でしか走者を許さず、終わってみればプロ野球史上初の初登板で準完全試合での完封勝利。

あの試合から始まる彼の広島での物語の序章を球場で見ることが出来たのは私にとって生涯の誇りです。

その後も圧巻の投球を続けて最優秀防御率のタイトルを獲得し、前任者であるブライアン・バリントンを遥かに超える活躍を見せてくれました。

開幕前後は兎角、黒田博樹の電撃的な復帰ばかりが話題となったシーズンではありましたが、投球の内容と結果では明らかに彼が上回っていたと思えます。

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そして前田健太が抜けた2年目の2016年。

開幕投手も努めるなどシーズン前の下馬評は圧倒的に最下位という評価が多くを占めたチームの投手陣を牽引して四半世紀に及んだ敗北の歴史に終止符を打った偉業に大きく貢献してくれました。

あの年は、最終的にはシーズン終盤の快進撃であわやリーグ最速に迫るスピードでの優勝となったシーズンではありましたが、中盤までは先発ローテーションを組むのも難儀する状況で決して最初から順風満帆ではありませんでした。

そんな中で開幕投手からマウンドで黙々とクレバーにイニングを消化し続けるジョンソンの「木鶏」とも賞すべき不動の姿が同僚やファンに勇気を与え続けたこそ迎えた快挙と言えるでしょう。

当時の私も、ホークスファンの友人から「カープ今年は調子いいけど今のエースって誰?」と聞かれて迷わず黒田や野村祐輔には目もくれず「ジョンソン」と答えた記憶があります

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また、この年は個人でも最多勝こそ野村祐輔に譲ったものの、外国人投手としては故ジーン・バッキー以来52年ぶり史上2度目となる(外国人左腕としては初)の沢村賞に輝く栄誉にも輝きカープのみならず球史にも大きく名を刻む事にもなりました。

余談ですが、バッキーも日本での最終シーズンはジョンソンと同じく0勝7敗という記録で何となく奇縁を感じます。

 

その後の彼の残した偉業はもはやカープファンなら小学生から老人まで誰でも知っている事でしょう。

2017年シーズンこそはコンディション不良と故障により低迷したものの2018年は見事に復活して3連覇に大きく貢献し、2019年も安定した投球を見せて球団史上、自身とコルビー・ルイスの二人しか達成していない外国人投手の2年連続二桁勝利を2度記録。

積み上げた勝ち星は自身の背番号の前任者であるバリントンの「40」を大きく上回る「57」と圧倒的かつ不世出の記録となりました。

また、外国人投手としては球団史上初かつ球団25年ぶりの日本シリーズでの開幕投手も務めるなど、鈴木誠也新井貴浩らを筆頭に大舞台にめっぽう弱い選手が多かったチームにあって、ポストシーズンでの安定感も特筆すべきものである事も忘れがたいです。

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これらの投手としての偉大な記録や記憶だけでなくグランド内外でも一人のアスリートとしてその人格は大変尊敬に値するものでした。

来日初年度から夫人(当時は確か婚約者でした)と連れ立って、広島生まれの広島育ちである私ですら行かないような県内のスポットを巡り歩いて異郷の地に慣れ親しもうとする姿勢や、クールなグランドでの表情とは真逆で優勝記念の提灯行列に飛び入りで参加したり、うっかり外出中に台風に遭遇して広島港で立ち往生する姿が一般人としてニュース映像に写り込んだりするユーモアはブラッド・エルドレッドの「ママチャリ通勤」共々ファンに親しみを与え続けてくれた広島名物とも呼べるもの。

また、判定に露骨に不満を見せるマウンドでの態度は審判やファンに与える心証のうえでは決して特になるものではありませんでしたが、それも今思い返せばグランドでは自身は勿論、他者にも決して妥協しない彼の高いプロ意識の現れだったのかもしれません。

 

球団歌の4番に書かれた「優勝」という言葉がたんなるジョークでしかなかった2015年の来日初年度から誰もが気楽に「優勝」という言葉を使うのを躊躇う事がなくなった今日まで広島という異国の地を鼓舞し続け多くの喜びをもたらしてくれた彼と共に私達ファンが歩んだ歳月は「カープ3連覇の時代」である共に「クリス・ジョンソンの時代」と呼んでも過言ではないでしょう。

そして、そんな時代を多くのファンと共々生きて行けた事に感謝しかありません。

同時にこの悲しい別れを受けて来季以降の彼がどのような形で野球を続けるのかはまだわかりませんが、これまで以上の栄光が待ち受けている事を祈りたいとも思います。

 

記録を

栄光を

何より「時代」をありがとう。

偉大なる左腕、クリストファー・マイケル・ジョンソンよ。

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