広島東洋カープ10-0東京ヤクルトスワローズ
23回戦(カープ18勝5敗)
勝利投手 九里8勝4敗
敗戦投手 ブキャナン9勝11敗
本塁打
先発、九里が8回を無失点で投げ切る好投で最終回の中崎へ繋ぐ。
打線は初回に打者一巡の攻撃で5点を先制すると、中盤以降も加点し10得点。
攻守共に初回から噛み合う展開で圧倒し球団史上初となる3年連続での9回目の優勝と、地元・広島での27年ぶりの優勝を決める。
中崎はプロ野球史上2度目の3年連続の胴上げ投手に輝く。
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曇天の夜空のせいか、いつもより暗く感じる広島の夜。
時折顔を出す朧月夜に見守られて待ちに待った歓喜の瞬間はやってきました。
優勝マジック「1」から足踏みが続いたばかりか、内容的にも攻守ともにチーム力の低下をうかがわせる低調な試合だったのがここ最近の2試合。
一部除いて低レベルな投手を起用せざるを得ない先発は2軍から九里亜蓮を投入。
そればかりか、頼りのヘロニモ・フランスアにイニング跨ぎをさせるというベンチの愚策により、今日の起用が難しかったという事情もあり投手に大きな期待は出来ませんでした。
そうなると、打線の序盤からの爆発に期待するしかないのですが…。
ここ最近は相手に先手を許して反撃が始まる前に試合が決まったり逆転するには至らないなどこちらも以前のような勢いに陰りが見られました。
そうである以上は、地元優勝へのプレッシャー以上に、チームの現状の実力的にも大変苦しい試合になる事が予想されました。
しかし、それを振り払ったのが松山竜平の初回の好守と、その裏の幸運極まりないイレギュラーでバウンドによる長打を始めとする初回の大量得点。
そして、何よりもそれを受けて望外とも言える素晴らしい投球を8回まで繰り広げた九里亜蓮である事は言うまでもありません。
特に白眉だったのは、3回までパーフェクトで迎えた4回に坂口智隆に安打を許した事をきっかけに招いた無死満塁のピンチ。
ここでウラディミール・バレンティン、雄平という強打者相手に切り抜けましたが、いずれもストライクゾーンでしっかり勝負する強気の投球。
今季は勝ち星の割には防御率もWHIPも壊滅的な内容でしたが、球場を包んだ熱気を文字通り力に変えた本当に素晴らしいものでした。
これにより最終的には10点差をつけて勝利したばかりか、現役引退を控えた新井貴浩を投入して、優勝の瞬間に立ち会う機会を作れるなど最高の形で胴上げを迎える事すらできました。
この九里の好投に誰もが…というか下手をしたら本人ですら驚いたかと思いますがこれに限らず今季はこのようにチームが窮地に陥った時に誰かしらが実力もしくはそれ以上の力を出して救ってくれたという事実が多くあったかと思います。
例えば、投手陣。
薮田和樹が不振で野村祐輔やクリス・ジョンソンも不振な中、先発陣では大瀬良大地が安定感を出したのは勿論大きかったですが、それと同時に岡田明丈や九里が今日ほどではないにしろ、一時的に底力を見せたのも大きかったかと思います。
また、ジェイ・ジャクソン、今村猛が不振のリリーフ陣も中崎翔太が一人最後の砦を守り続けた事に加えて、アドゥワ誠やヘロニモ・フランスアといった救世主がいた他に、一時的に崩壊の危機を救った永川勝浩のような投手がいた事も忘れられません。
それでも尚、力不足であった投手陣を救った打線。
しかしその打線にしても菊池涼介、田中広輔が不振で安部友裕が故障し、丸佳浩と、鈴木誠也ですら一時離脱と必ずしも全員が安定していた訳ではありませんでした。
ここぞで力を発揮した松山竜平やたんなる代走守備要員からの脱却に成功した野間峻祥や、奇跡の一打を放った下水流昴など一部の主力任せでないスカッドがあったから投手陣を年間通して援護できたと言えるでしょう。
今日の九里を見ていると、今宵の曇天の夜空に見え隠れする月のように決して主役になった訳ではないにしてもところどころで姿を現しては輝いた戦力を上手く組み合わせる事が出来た事でこの球団史上初となる3連覇という偉業は達成されたと言えるのかもしれません。
最後の最後でそういう事を教えてくれるような試合で終われたのは本当に素晴らしい事です。
一昨年前の東京ドームで見た胴上げは空の見えない場所からでしたが、今日は曇天とはいえ夜空の下。
カクテル光線に照らされた胴上げは本当に本当に美しかったし感動的でした。
この光景はリーグ3連覇という読売以外のチームでは達成されていなかった記録と共に私は死ぬまでに語り継いでいきたいと思います。
本当におめでとう。
そしてありがとう。
私たちの広島東洋カープ